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2022年8月25日 (木)

俳句とからだ 185 連用形から名詞へ

連載 俳句と“からだ” 185

 

三島広志(愛知県)

 

連用形から名詞へ

俳句結社誌から原稿依頼をいただき投稿したところ、編集長から「ほのめき」という言葉に関して問い合わせがあった。スーパー大辞林3.0(三省堂)と広辞苑第七版(岩波書店)に当たってみると、どちらも「ほのめく」という動詞は納められているが、「ほのめき」は見出し語になっていない。

精選版日本国語大辞典(小学館)には次のように掲載されていた。

ほの・めき【仄-】

〘名〙(動詞「ほのめく(仄-)の連用形の名詞化)ほのかに感じられること。また、はしばしにあらわれること。その様子。また、そのもの。

*源氏(1001-14)匂宮

「しるきほのめきのかくれ有まじきにうるさかりて」

三省堂国語事典第八版(三省堂)には

ほのめ・く[(仄めく)]⦅自五⦆

〔文〕ほのかに見える。

「ともしびが―」

[名] ほのめき

と動詞「ほのめく」の名詞形とある。

 

動詞の連用形が名詞化した言葉なら「かがやき」「きらめき」「ときめき」と幾つか思い浮かぶ。広辞苑の後方機能(逆引き)で「〇〇めき」を調べると「うめき、ささめき、ときめき、ざわめき、ひしめき、ひらめき、ふるめき」と出てきた。それらに関しても辞書によって見出しにあったりなかったりする。見出しが動詞で説明文に「古語からきている」「連用形の名詞化である」「名詞の形」などさまざまだ。

うごめき 広辞苑、大辞林、日本国語大辞典は見出しなし。三省堂は「うごめ・く」の項に名詞の形「うごめき」と表記。

かがやき 大辞林(近世初期まで「かかやき」)、広辞苑(近世前期まで清音)、日本国語大辞典(古語かかやきから) は見出しあり。三省堂は「かがや・く」の項に名詞の形「輝き」と表記。

きらめき 大辞林、広辞苑、日本国語大辞典(名詞化) は見出しあり。三省堂は「きらめ・く」の名詞の形「きらめき」と表記。

 

連用形の名詞化に関しては「日本語連用形名詞の自立性の段階について」(沈晨 北京外国語大学)や「動詞連用形の名詞化に関する一考察」(西尾寅弥 宇都宮大学)などの論文も見つかった。編集部から拙文中の一語の疑義をいただいたお陰で思わぬ調べ事となった。

 

辞書は有限である。日本国語大辞典は別巻を含めて全十四巻だが、広辞苑は一巻だ。多くの言葉を削がなくては纏められない。辞書によって掲載語が異なるのは仕方の無いことだ。辞書を参照するのは大切だが、辞書が書き手に君臨するわけではないだろう。

 

広辞苑ひらきて薔薇をみるでもなく 柿本多映

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