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2020年7月 2日 (木)

俳句とからだ 165 K高校文芸部へ

連載俳句と“からだ” 165

 

愛知 三島広志

 

 句集『天職』を上梓した。K高校文芸部の生徒さん達が感想文を送って下さったのでその礼状を書いた。以下に紹介する。

 

K高校文芸部へ

世界中を新型コロナウイルスの猛威が席巻し、安穏とした日常生活を営むことが出来ません。高校も進級、新学期という時期なのに学校へ通うことが出来ず残念でしょう。しかも俳句甲子園も地区大会は中止だそうです。予選大会中止は2011年の東北大地震に続いて二度目のことでしょうか。私はおよそ十年間、俳句甲子園の審査員をさせて戴きました。K高校文芸部の皆様は愛知県の牽引者であり、全国でも一目置かれる存在です。準優勝が三回でしたか? 最優秀作品も二名輩出しています。今年もしっかり勉強され、大会に向けて良い句を作り、解釈と鑑賞のディベートを磨いてください。

相手の句を素直に読み、理解し、映像化する。これが解釈です。次に自分の知識や経験、想像力で鑑賞して世界を広げる、これを鑑賞といいます。いずれも相手へのリスペクト、俳句へのリスペクトが基本になります。良い句に出会えた感謝、さらに良い句にする鑑賞。想像と創造。これらを言語化するのがディベートです。おおいに楽しんでください。

 

拙句集から以下の句を選んで下さいました。ありがとうございます。

黒南風やいつも自分にせかされて

 手袋がそつと迷子の頬を撫で

 三日月や家路に崩れ雪だるま

 地下鉄の冬あたたかき木霊かな

 この国のこの町のこの櫻かな

 初夢のはじめ分からぬ旅衣

 木の実降る村に一戸の何でも屋

 

私も高校生から俳句をぽつぽつと始め、かれこれ五十年経ってしまいました。感性はすっかり錆びついています。ただ日々折々、ふっと胸中や脳裏を掠める感興を捕まえて句にすることで人生を豊にしています。

 

今のような非常時、命を支える食料、医療、交通、流通、介護、水道、電気、ガスなどをEssential business(必須事業)といいます。これは生物としてのヒトの棲息を維持するものです。しかしヒトは社会的人間となります。この人間にとって必要なもの、それが文化です。文学や美術、音楽などの芸術もそこに入ります。

 

私達は生物としてのヒトとして産まれ、社会的歴史的生物のとなります。そして皆と共存する人間となります。これは教育のお陰です。時間と空間つまり歴史と社会を認識した生物を人間というのです。人間の住むところが世間ですね。皆、という字がつくのは関係性の中に生きているということなのです。文学を通して過去の人たち、未来の人々、そして今を生きている仲間と交流し、一度しかない人生を深く、楽しく築いて下さい。その一つの手段が俳句です。     (冒頭末尾の挨拶省略)

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