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2020年1月23日 (木)

連載俳句と“からだ” 159

連載俳句と“からだ” 159
愛知 三島広志
ヒポクラテスとナイチンゲール
医学の起源は古代ギリシャのヒポクラテ
ス(B.C.460-?)に遡る。彼は人類誕生と
同時に自然発生した伝承医療を学問として
成立させ、さらに医療者の心得を定めた。
ヒポクラテスの誓いは今日でも医師の規範
となっている。
ヒポクラテス以後の主立った功績者を上
げよう。十四世紀、イタリアで始まったル
ネッサンスを代表するレオナルド・ダ・ヴ
ィンチ(1452- 1519)は身体を宗教的束縛か
ら解放、一個の実体として観察する。その
後デカルト(1596-1650)の心身二元論に基
づき近代医学への道が開かれた。身体を肉
体と精神の二元に分け、肉体を物体として
研究する道筋を作ったのだ。これ以降、科
学技術の進化が医学を進歩させる。1676
年、レーウェンフックは顕微鏡で細菌を発
見。ジェンナー(1796年種痘ワクチン)は
人類を天然痘から救い、コッホは1876年
、炭疽菌を発見、病原体の存在を解明し
1882年結核菌発見。リスターの消毒法開
発(1887年)と続く。消毒法は手術を劇
的に発展させることとなる。
今生は病む生なりき烏頭 石田波郷
1869年、日本は開国し西洋文化を受容、
北里柴三郎(1889年破傷風菌培養、1894年
ペスト菌発見)や志賀潔(1897年赤痢菌
発見)などが国際的に活躍する。さらに二
十世紀に入り薬品や検査機器の革新的進化
、遺伝子に基づく医療の発展と続く。
医療の長い歴史に比べ看護(介護を含む)
の歴史は浅い。勿論これらも人類誕生と同
時に発生したが学問として成立するにはフ
ローレンス・ナイチンゲール(1820- 1910)
を待たねばならなかった。裕福な家庭に生
まれた彼女は語学、芸術、哲学、心理学、
数学などを総合的に学習した。彼女は近代
ヨーロッパを二分するクリミア戦争(1854)
の悲惨さを知り、看護のため従軍し衛生の

悪さが負傷兵の死亡率を高くしていること
を指摘、統計的手法で感染症と死亡率の研
究、生存率を高めることに成功した。彼女
の看護師としての実働は二年だけであり、
その後、37歳で病気に倒れ90で亡くなる
までほぼベッドで執筆をしながら看護教育
を確立した。それまでの看護は家族などの
経験主義によるものだったが、ナイチンゲ
ールは科学的思考で学問として成立させた
のだ。死亡原因ごとの死者の数をひと目で
分かるように工夫したクモの巣チャートを
考案し、イギリスでは彼女を統計学の先駆
者としている。彼女による改革は保健制度
のみではなく、陸軍全体の組織改革につな
がった。彼女は1859年にイギリス王立統
計学会の初の女性メンバーに選ばれ、後に
はアメリカ統計学会の名誉メンバーとなる
。スイス人アンリ・デュナンは彼女に影響
を受け1863年、赤十字社を作った。功績
ある看護師などに与えられる賞は彼女の名
を冠しナイチンゲール記章と呼ぶ。
 夜明け待つもの青萱と看護婦と
飯田龍太

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