« 連載俳句と“からだ” 127 | トップページ | 連載俳句と“からだ” 129 »

2020年1月22日 (水)

連載俳句と“からだ” 128

連載俳句と“からだ” 128
愛知 三島広志
血液脳関門ふたたび
(2014年9月号第95回にも脳関門を書いている)
生命体は実に巧妙にできている。骨模
型を眺めていると、骨の表面に神経や血
管が通る溝があり、関節の付近には腱が
付着しやすいような粗面もある。
骨の様に具体的には見えない生理機能
にも感嘆する働きがある。食物を摂食す
る際、噛みきり咀嚼するための堅い歯が
あり、その時食物が零れないように口唇
が柔らかく包む。嚥下する際は食物が気
管に落ちないよう毎回喉の蓋が飛び出て
誤嚥を防ぐ。食物が胃に入れば強い胃酸
により殺菌、安全なものとして十二指腸
へ送る。そこへは膵臓から酵素が注がれ
消化を助ける。さらに細かく分解した後
、小腸で選別され身体に必要なものと判
断された物質が血液と一緒に吸収され、
肝臓に送られる。消化管を経た血液は肝
臓に入る前、肝門脈に集まり肝臓へ送ら
れる。肝臓はその血液を代謝、解毒して
安全なものとして身体に取り込む。つま
り外部から取り込まれた身体にとって異
物、非自己である食物は胃と小腸、肝臓
という様々な関門(実際にはもっと複雑
である)を経て安全を担保した後、体内
に取り入れられ自己化されるのだ。
脳の入り口もまた関門=バリアがあっ
て危険なものの侵入を遮っている。この
働きを行う器官を血液脳関門(BBB:blood
brain barrier)と呼ぶ。この血管は脳の
中に必要な物質を通し、不要なもの、害
のあるものは入れない。こうして脳の健
康を維持しているのだ。具体的には脳の
栄養であるグルコース(糖質)やケトン
体(体内で生産される物質)、そして酸
素は通過できる。害を及ぼす細菌やバク
テリアは通常通過できない。
ところがその関門をするりと通過する
物質がある麻薬や向精神薬だ。そもそも
これは脳に入らなければ薬理作用が発揮
できない。珈琲や紅茶、緑茶に含まれる
興奮作用を有するカフェインも通過する
。したがって夜眠れなくなる人はこうし
た嗜好品は避ける方が良い。また脳内伝
達物質に近い作用を持つニコチンも脳に
入り込む。だから依存的となり遮断する
ことが難しい。
さて、我がアルコール。これも血液脳
関門をするりと抜ける。アルコール耐性
のある人には少量なら気分爽快、至福感
、リラックス効果が期待できる。過飲は
精神的影響がマイナスに作用し、さらに

ニコチンと同様依存を招く。
アルコールは脳関門の制御がないこと
を深く肝に銘じ、人に迷惑をかけぬよう
味わうべきだろう。以下の詩は酒の世界
を賛美して余りある。
勧君金屈巵 満酌不須辞
花發多風雨 人生足別離 (武陵作)
この杯を受けてくれ
どうぞなみなみ注がしておくれ
花に嵐のたとえもあるぞ
さよならだけが人生だ(井伏鱒二訳)

|

« 連載俳句と“からだ” 127 | トップページ | 連載俳句と“からだ” 129 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。