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2020年1月23日 (木)

連載俳句と“からだ” 157

連載俳句と“からだ” 157
愛知 三島広志

 炎天下、路上にキラキラ蠢く虫を見つ
けた。髪切虫かと拾い上げるとミーミー
ミーミーと激しく啼く。名古屋では稀少
なミンミンゼミだ。ある実地調査では名
古屋で収集された蝉殻のうち、ミンミン
ゼミは0.1%。東京では一般的なミンミ
ンゼミも名古屋では極めて稀少である。
参考
「名古屋市いっせいセミのぬけがら調査 5年間のまと
め」では平成21年から五年間の抜け殻の調査をまとめて
いる。それによるとアブラゼミ80.9%、クマゼミ
17.6%、ニイニイゼミ1.21%、ツクツクボウシ0.29%で
ある。別の調査でミンミンゼミは0.1%。西区ではアブ
ラゼミ2648個、クマゼミ7個だが千種区ではアブラゼミ
1187個、クマゼミ370個である。ニイニイゼミは緑区で
203個だが他の区ではほとんど0個である。
1980年頃まで名古屋はアブラゼミの天
下だった。その後クマゼミが声の大きさ
と相まって急増した印象がある。秋口か
ら目立つツクツクボウシも名古屋では滅
多に聞かれない。ヒグラシは寒蝉という
秋の季語だが実は梅雨明け、ニイニイゼ
ミなどと一緒に羽化して一夏啼く。しか
しこの蝉は広葉樹林に棲むので名古屋市
内には棲息していない。
 蝉の生態はその生涯がほとんど地中の
ため正確に分かっていない。またその分
布は極めて複雑で、先の調査のように地
区によって個体の分布差が激しい。蝉の
寿命は地中の数年と地上での一週間と思
われていたが、近年様々な調査で30日近
く生存するのではないかとされてきてい
る。確かに梅雨が明けると、公園などで
日没直後、幼虫が一斉に這い出してきて
羽化し、秋にはいなくなる。これは梅雨
明けに羽化した蝉が、およそ一ヶ月生き
ていたことではないかと推測される。
蝉時雨子は担送車に追ひつけず
    石橋秀野
 クマゼミの北上には温暖化説と樹木移
植説がある。樹木に産み付けられた卵が
移植先で孵り、幼虫が気温の安定した地
中に入り数年後地上で羽化し、気候が合
えばその地で繁殖する。毎年バルコニー
のシマトネリコの木にクマゼミが来て樹
液を吸っている。この木は暖かい地方の
樹で、育て易いので名古屋市内でよく見
かける。こうした樹の移植がクマゼミに
とって棲みやすい環境を作っている可能
性も否定できない。今年名古屋ではクマ
ゼミの声が少なく、アブラゼミの声がよ
く聞かれた。さらにミンミンゼミの声を
聞いたという報告が多かった。そしてつ

いに、生きた個体を拾ったのだ。これが
一時的な変化なのか継続するのか、過渡
的なものなのか。興味は尽きない。
  閑さや岩にしみ入る蝉の声 芭蕉
この蝉はニイニイゼミとされているが
ヒグラシのカナカナカナという哀愁が似
合う。

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