連載俳句と“からだ” 156
連載俳句と“からだ” 156
愛知 三島広志
レビー小体
毎月数回医療や介護の勉強会に参加し
脳が錆びないように心がけている。伝承
医療は中国三千年の知恵などと悠久不変
を誇っているが科学は日々進化変化して
いる。伝承医療は古典的絶対論だが、自
然科学を元とする医学は相対論であり常
に進化変転する。
先日、パーキンソン病の新しい知識を
学んだ。パーキンソン病は1817年にパー
キンソン博士により報告された。病気の
特徴は安静時振戦(手の震え)、寡動・
無動(動作や歩行の開始困難、速度低下
などの運動障害。表情も仮面のように乏
しくなる)、筋強剛(筋固縮とも。筋肉
が固く動かすと抵抗が生じる)、姿勢保
持反射障害(姿勢が崩れたとき戻せない
、上手に歩けない)であり以上を四大兆
候と呼ぶ。この病気は進行性の神経変性
疾患であり、最終的には介護を要する寝
たきり状態となる。療養は長期となり概
ねその人の天寿を全うする。現在の医学
では症状緩和の薬物療法や動作維持の運
動療法はあるが、治癒は不可能だ。発症
は65歳から急増する。講師の話では人は
120歳まで生きれば誰でもパーキンソン
病になるとのことである。
パーキンソン病に関しては中脳の黒質
線条体が緩慢に脱落しドーパミンという
神経伝達物質が減少していくことと、レ
ビー小体という物質の関与が分かってい
る。ドーパミンは薬物で補うことでかな
りの効果が認められる。
レビー小体は100年ほど前レビー博士
によってパーキンソン病との関連が明ら
かにされた。これが近年腸管から迷走神
経を上行して延髄、中脳にきて神経変性
を起こすことが明らかになってきた。パ
ーキンソン病の患者が便秘に苦しむのは
消化管が早期にレビー小体の影響を受け
るためだろうとされている。
レビー小体はパーキンソン病だけでは
ない。この頃アルツハイマー型認知症に
次いで知られるようになったレビー小体
型認知症にも関係している。アルツハイ
マー型認知症は健忘と見当識障害(場所
や時間が分からない)を特徴としレビー
小体型認知症は健忘に加えて幻覚とパー
キンソン症状が出現する。レビー小体が
脳に入り運動野に影響すると身体症状、
知覚野に影響すると幻覚などが見えると
いう仮説が成立する。これらの事実が動
物実験で確認されてきている。
こうして医学は進歩、医療は発展し人
類の安心幸福に関与している。変化を制
止すると進歩も止まる。俳句も同様に伝
統に胡座をかくのではなく、伝統の中に
ある誠や構造、本質を抽出して次の世代
に発展的継承することが肝要だろう。
老いゆくは新しき日々竜の玉
深見けん二
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