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2014年2月12日 (水)

俳句とからだ83

連載俳句と“からだ” 83

 

 

愛知 三島広志

 

直立して得た矛盾

 生物の進化に関しては昔から考察されてきた。古代ギリシアの哲学者アナクシマンドロス(前610-546)は生物が海で誕生し陸に上がったと推測している。また荘子(前369 –286)も生物が環境に適応して様々な形態をしている事実から生物の恒常的変化を説いている。

 

進化が初めて科学的に論じられたのはラマルク(1744-1829)の用不用説。そしてチャールズ・ダーウィン(1809- 1882)の進化論へ続く。反進化論もあるようだが、現代では概ね生物は進化していくと考えられている。但し注意すべきは進化とは変化であって決して進歩ではないということ。進化が必ずしも進歩になっていないことは、目下進化の頂点にあると思われる人類の愚かさを見れば明らかだ。

 

鮟鱇や嘘かまことか進化論

       遠藤真太郎

 

 分類学上ヒトは哺乳綱・サル目・ヒト科に属す。さらにヒト科はオランウータン亜科とヒト亜科、ヒト亜科にヒト属、チンパンジー属、ゴリラ属がある。ヒトとゴリラとチンパンジーは近似なのだ。

 

ヒトとゴリラ・チンパンジーとの差の一つに直立がある。ヒトは直立することで重い頭脳を得たと同時に、両手が完全に解放された。近似のゴリラやチンパンジーの上肢は歩行の補助に使用しており完全解放されていない。ヒトは直立で得た巨大な頭脳と解放された手で歴史を編み、今日の社会を作り上げた。

しかし同時に直立はヒトの上下意識を明確にしたという矛盾も孕む。「籠に乗る人担ぐ人、そのまた草鞋を作る人」と詠まれるように社会には階層がある。その階層を是とするのが封建制であり、近代市民社会が自由平等友愛を唱え絶対的権力者という上層を革命によって排除することで自由で平等な社会を目指した。

上は偉いというヒエラルキー、これは直立することによる身体感覚が生み出したと仮定されるのだ。地面を這っている二次元世界ではこうした階層は明確にはならないだろう。したがって近代社会は階層と平等という矛盾を包摂と止揚することで成立しているのだ。

 

山桜生きとし生けるものすべて

伊藤哲子

 

 生物とは自己保存と種族保存を行う存在だ。そのために他者を区別し自己(含仲間)を守る闘争能力を本来的に所有している。直立して得た頭脳は闘争という自然界の輪廻から自由平等友愛への解放を目指した。しかし現実にはその根は深く未だに戦争や闘争は無くならない。否、直立することで階層性が明確になり更に複雑化したように見受けられる。

 

向日葵や先人は皆直立し 成川崖花

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