俳句とからだ 46
連載俳句と“からだ” 46
愛知 三島広志
肩甲骨は翼か
仕事場に等身大の骨格模型がある。説明のためだ。試みに手首を持って上肢を羽ばたきの様に動かしてみる。模型だと肩関節の構造や動きが理解し易い。腕を水平まで上げるとその動きが肩甲骨や鎖骨に連動する。ここで皆一様に驚く。そこで肩の解説を行う。
1、肩の関節は上腕骨と肩甲骨と鎖骨と胸骨で形成される。狭義の肩関節は上腕骨と肩甲骨で構成(肩甲上腕関節)。
2、鎖骨と肩甲骨は肩先で関節を作る(肩鎖関節)。
3、上腕骨は鎖骨を仲介に胸の中央にある胸骨と継がる(胸鎖関節)。
4、肩甲骨は胸郭背部で肋骨に載る形で関節を形成。(肩甲胸郭関節)。
5、上肢と躯幹は胸側の胸鎖関節と背中側の肩甲胸郭関節で連なり、動く。
多くの人がこれらの解剖的説明に納得する。腕は胸の中央、喉の下の胸鎖関節から出てという事実。肩甲骨も関節であり背中で動いているという事実。腕は想像しているより長いのだ。
夏に入る肩甲骨をきしませて 杉山久子
肩が凝りやすい人は筋肉を無駄に働かせて腕を動かしている。その動作はこれらの関節構造を上手に活かしていないので筋肉と骨格の連動性がうまく機能しない。したがって筋肉に無用な力みが生じ、肩が凝ってくる。内臓からの反射や過剰ストレスなどの問題を除けば、肩や腕の使い方に気を付けるだけで肩凝りがかなり楽になる。
腕を水平まで上げたとき、上腕骨は60度、肩甲骨が30度動いている。常に両者の動く角度の比率は2対1だ。したがって肩の動作のコツは普段意識しない肩甲骨を上手に使うことだ。動きが肩甲骨から派生し、胸鎖関節という支点を操作すると意識する。すると上肢が脱力して自在に動く。力みがなくなるからだ。そして支点である胸鎖関節から伸びやかに動作する。まるで浅田真央やキム・ヨナの腕のように。
では実際に片手で羽ばたいてみよう。左手で右の胸鎖関節や鎖骨に触れ、動きを感じながら右の腕で羽ばたいてみる。ゆったり大きく。挙上した腕が耳に触れるまで。大切なことは肩甲骨と鎖骨を動かす意識。こうすると普段より肩の動きが大きいはずだ。背中や体側も伸びるだろう。深呼吸を加えるとなお良い。腕を挙上するときに吸い、下ろすとき吐くのだ。最初は慣れないので筋肉に痛みやつっぱりを感じるかもしれないがすぐ慣れるだろう。
もう一度鏡を見ながらやってみよう。いつもより腕が長く感じる。そこには真央かヨナが写っている・・・はずだ。
をさなごに生ふる翼や桜東風 仙田洋子
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