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2011年9月28日 (水)

俳句とからだ 45

連載俳句と“からだ” 45


愛知 三島広志

唇歯輔車そして舌

 唇歯輔車という故事がある。唇と歯は互いに密接に助けあっており、一方が滅べばもう一方も成り立たないという意味だ。輔車も頬骨と歯茎つまり顎関節のこと。一説には車の添え木と車輪ともいう。身体は鼻から空気を呼吸し、口から食物を摂取することでいのちを育んでいる。その入口が唇であり、歯牙でそして舌である。また歯牙を動かすのが顎関節と周辺の筋肉群だ。

 現代人の歯牙は上下合わせて28本。親知らずを含めると32本となる。切歯(前歯)は上下計8本。犬歯(糸切り歯)は上下計4本。臼歯(奥歯)は計20本で小臼歯と大臼歯に分けられる。永久歯は再生が効かないので大切だ。先日歯牙の管理に行ったとき、歯科医から近年の歯科治療では「極力削らず、抜かず」というあり方に変わっていると聞いた。歯牙にもある程度の再生能力があるからだそうだ。これは朗報である。

 うつくしきあぎととあへり能登時雨  飴山實

ある健康法では歯牙の種類の割合で食物を摂取するように勧める。切歯はウサギなどのように野菜を食べる歯牙、犬歯は肉食動物の牙、臼歯は牛の仲間のごとく穀物をすり潰す歯牙。それらの歯の割合が2:1:5となる。つまり野菜と肉と穀物の割合が2:1:5になるように食べろと言うのである。一見一理あるようだが無論何の根拠もない。健康法にはこうした怪しいものが多いので注意が必要だ。ただ野菜、肉、穀物を満遍なく食べるので偏食を防ぐという意味がある。これは同じく根拠のない酸性・アルカリ性食品、あるいは陰・陽性食品も同様である。

 噛む力は顎関節とそれを動かす筋肉群から生まれる。顎関節周辺は食事時も話す時も動いている。黙って集中する時は噛み締める。全く休むことが無い。就眠時でさえ歯ぎしりすることがある。ここが疲れている人は首の横が凝っていることが多い。甚だしい時は歯科で顎関節の調節をしてもらわなければならない。

 食の摂取にもう一つ重要な器官が舌。舌は食物と唾液を混ぜ、喉に送り込む。味覚もここで感じる。介護施設では「パタカラ」体操を行う。これは口唇と舌の体操だ。

パ 口唇を閉めたり開いたりする。
タ 舌を打つ。
カ 喉の入り口の開閉。
ラ 舌の運動。

これらの動作によって摂食や発語が行われる。暇なとき「パタカラパタカラ」と繰り返していると老化防止に役立つ。

 万緑の中や吾子の歯生え初むる  中村草田男

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