« 俳句とからだ 42 | トップページ | 俳句とからだ 44 »

2011年9月28日 (水)

俳句とからだ 43

連載俳句と“からだ” 43


愛知 三島広志

頭とツボ

 頭は8個の骨片がジグソーパズルのように組み合わさってできている。その役目はヘルメットとして脳を保護することだ。これを脳頭蓋という。さらに14個の骨が顔面を形成している。これが顔面頭蓋だ。両者を合わせて頭蓋骨と呼ぶ。その形態は髑髏そのものだから誰でも知っている。正面には目玉の収まる穴と鼻の穴が開き、歯牙が剥き出し、横には耳の穴。唯一可動性のある顎関節には下側の歯牙が付く。

 頭の中で白い夏野となつてゐる 高屋窓秋

 頭はご存知のように固い。骨を薄い皮膜が覆っているような印象だ。ところが丁寧に触れてみると微細な凸凹や穴があり、そこかしこに経穴(ツボ)が存在する。有名なツボは百会。頭頂にある。鼻の線を上に延長し、両耳を結ぶ線との交点に取る。百会とは全ての経絡が集まるところの意味である。その前後左右、親指の幅ほど離れた所には四神聰という四つのツボがある。

実際に頭に触れてみよう。悩み抜いて頭を抱えているようにすると中指がおおよそ百会に当たる。そうすると示指と薬指がそれぞれ前後の四神聰を抑えるようになる。指は熊手のような形がいい。次いで中心線から親指の幅だけ外へ移動すると中指の先が左右の四神聰に触れる。ツボの抑え方は指先の力を抜き、沈める。イメージとしてはジャガイモの茹で加減を箸で刺して調べる感じで指を柔らかく頭に通していく。ツボの位置にこだわらず五本指全てに柔らかい力が加わった方がツボに嵌っていく。これらのツボは上気した気を散じ、頭の疲れ解消や精神的な安定に役立つ。目の疲れも和らぐだろう。

 手を当てるとは対象に溶け込むことだ。押しつけではなく受容してもらうこと。恩師増永静人先生は千利休が説いた稽古のための歌『利休百首』の「茶を振るは手先をふると思ふなよ臂よりふれよそれが秘事なり」を捩って「指圧とは指で押そうと思ふなよ肘より押せよそれが秘事なり」と指導していた。ツボを抑えるときも同様に指先でなく肘、あるいは肩から力を加えるようにするとツボが開いてジ~ンとした心地よい響きを生じる。頭の指圧は指先の意識を捨て、掌全体で頭を抱えるようにするとツボにはまる。
ツボは壷であり蕾である。通常は壷のように口がつぼんでいるのだ。中国語の経穴も八の形に入口がつぼんでいるという意味。指を優しく当てることでツボは開口する。粗雑な触れ方をすると閉じてしまう。無理に押すと「親切の押し売り」となって反発を招く。しかも筋繊維など傷めてしまう。

 大空に莟を張りし辛夷かな 松本たかし

|

« 俳句とからだ 42 | トップページ | 俳句とからだ 44 »

俳句とからだ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 俳句とからだ 43:

« 俳句とからだ 42 | トップページ | 俳句とからだ 44 »