« 俳句とからだ 36 | トップページ | 俳句とからだ 38 »

2011年9月28日 (水)

俳句とからだ 37

連載俳句と“からだ” 37


愛知 三島広志

膀胱・脊椎と自律神経

 膀胱は腎臓で血液を濾して生成された尿を貯め、必要に応じて排泄する袋状の器官である。水中に棲む魚類には不要だが陸に上がった生物は排泄するタイミングが重要で排尿によってテリトリーを誇示したり、異性を誘惑したりする。同時に外敵に自分の居場所を教えることにもなり安易な排泄は危険なのだ。人にとっては社会的に重要な器官で、これがないと常に垂れ流すことになり不衛生かつ不便。オムツを常用しなければならなくなる。そこで尿を一時的に貯留する膀胱が必要となる。

 蚤虱馬の尿する枕元  芭蕉

東洋医療では膀胱を「州都の官」と比喩的に説明している。水をコントロールするということだ。ところが膀胱と冠された経絡は独特の役割を担っている。膀胱経は目頭から頭、脊中の両側を走り、下肢の真ん中を脚の第五趾外側まで走る。注目すべきは脊柱を支えるようにその両側を走っていることだ。脊柱には脳の延長である脊髄が通っている。そして脳・脊髄からは自律神経が各器官に伸びている。

自律神経は意識と無関係に働いて生体機能を調節している。交感・副交感の二種類があり、昼間や活動時は交感神経が働き心臓の働きを高め、呼吸を速くし、消化管の働きを抑制する。この刺激は副腎のアドレナリンや交感神経自身の出すノルアドレナリンによって媒介される。逆に夜間や安静時、食事時には副交感神経が働き心臓の働きや呼吸を抑制、消化酵素の分泌を促進、消化管の蠕動運動を活発にする。副交感神経の刺激はアセチルコリンによって媒介されている。これらが乱れると自律神経失調となる。

 名月や君かねてより寝ぬ病 太祗

膀胱経の特徴は脊椎の両側を通るツボに内臓の名前が冠され、そのツボが内臓に関連していることを示唆していることだ。肺兪・心兪・肝兪・胆兪・脾兪・胃兪・腎兪・大腸兪・小腸兪・膀胱兪などである。これは自律神経の事実と相似している。同じ考えが骨格調整を主体としたカイロプラクティックなど世界中の伝統的な医療に共通する。古人にはもちろん自律神経などの知見はない。経験上、背中の凝りや痛みが内臓機能と関連していることに気づいたのだろう。

背骨は東西の伝統療法の橋渡しをすると同時に、神経学的に西洋医学とも交錯する。そして古代中国人は経験的に尿意を通じ身体と精神の間に心身相関を感じ取っていた。そこで多くの内臓の状態が反映される脊椎の両側を通る経絡に内臓の代表として膀胱の名を冠したのではないだろうか。

 しづかさの背骨にしづむ大暑かな 森澄雄

|

« 俳句とからだ 36 | トップページ | 俳句とからだ 38 »

俳句とからだ」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 俳句とからだ 37:

« 俳句とからだ 36 | トップページ | 俳句とからだ 38 »