« 俳句とからだ 33 | トップページ | 俳句とからだ 35 »

2011年9月28日 (水)

俳句とからだ 34

連載俳句と“からだ” 34


愛知 三島広志

脾・思えば脾を病み・・

 東洋医療を西洋医学的に説明することは邪道である。未開発で経験主義、それを怪しい陰陽五行などで説明しようとしている伝承医療はとうてい科学的ではない。科学的でないということは再現性を客観的に確認されていないということだ。そこには人対人という関係性の中で技術を駆使して某かの結果を得ようという営みがあるだけである。従って東洋医療を西洋医学的に説明することは不可能なのだ。西洋医学的に整合性ある説明が可能ならそれは西洋医学の範疇に引き込まれてしまう。(註:今日からみると陰陽五行は非科学的であるが、物事の本質に迫り、理を解し、説明しようとする行為自体は尊い。MRIも心電図もない当時、陰陽五行が最先端の指標だったのだ)

 冬の日の海に没る音をきかんとす  森澄雄

では何故今日でも非科学的医療が存続しているのか。それはその非整合性故に西洋医学には無い温かみのある手作り医療として再評価されているからだ。と、前を振っておきながら脾は西洋医学の膵臓に近い概念であると矛盾したことを言わなければならない。東洋医療が普遍的な用語を持っていない悲しさだ。東洋医療の脾の臓は胃とともに外部から食物を取り込みいのちに転換する役割を担っている。胃が外部から取り込んだ食べ物を石臼のように擂り潰し、脾はその中からいのちの成分を運び出す仕事をするとされている。そうなると脾は消化の中心である膵臓と説明することが最も妥当と感じるし現代人にも理解しやすい。現代医学の脾臓は血液やリンパに関わる臓器であるから全く異なったものだ。

 山頂に脾腹をあづけ蜜柑食ふ  佐藤鬼房

古書に「思えば脾を病む」とある。考え過ぎると食欲が無くなることは日常経験するだろう。くよくよしたり、お節介に他人の心配ばかりしていると脾の働きが悪くなる。脾の経絡は足の親指内側から膝の内側を通り、わき腹に終わる。そのためか脾を病むと膝が悪くなることが多い。膝の辺りの脾経に力が無い。そこは大腿四頭筋の内側広筋だ。変形性膝関節症の予防にはこの筋肉の強化が有効で、整形外科では足に錘を着け膝を伸ばす体操を推奨する。同時にその筋肉の柔軟性も大切なので胡坐をかいて内股の筋肉を静かに指圧するといいだろう。指圧といっても掌全体を用いる。右の内股に右の掌を柔らかく当て、その上に左の掌を置き、膝頭に向かってお辞儀をする。すると自然に圧が内股に加わって指圧になる。無理に押さないで息を吐きながら体重をかけることがコツである。

 鷄頭を三尺離れもの思ふ 細見綾子

|

« 俳句とからだ 33 | トップページ | 俳句とからだ 35 »

俳句とからだ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 俳句とからだ 34:

« 俳句とからだ 33 | トップページ | 俳句とからだ 35 »