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2011年9月28日 (水)

俳句とからだ 29

連載俳句と“からだ” 29


愛知 三島広志

仙骨と呼吸

 仙骨は動作に先駆けて動く骨であると同時に呼吸運動にも関与している。意外なことに仙骨は呼吸運動と協調して動いている。試みにうつ伏せになって誰かに仙骨を抑えてもらうとよく分かる。息が十分に吸えないのだ。わたしたちの身体は呼吸をしているだけで仙骨から脊椎、頭蓋骨までしなやかに動いている。呼吸運動は脳脊髄液の循環を助け、脊椎に関連する筋肉の伸縮を促し、内臓の自己マッサージをしていることになる。今回は仙骨を意識した呼吸を試みてみよう。これは第25回に書いたことの復習でもある。

  白き息ゆたかに朝の言葉あり 西島麦南

呼吸

呼吸とは酸素を血液中に取り込み、二酸化炭素を体外に排出することだ。空気の出し入れである呼吸運動とは分けて考えなければならない。呼吸のうち、外気と血液との間でガス交換されることを外呼吸という。これは肺の中で行われる。空気中の酸素を肺胞で血液に取り込み、二酸化炭素を排出する。酸素を含んだ血液は心臓に送られ、動脈で全身の組織に送られる。各組織では細胞と血液との間でガス交換がなされる。新鮮な酸素を細胞に受け入れ、不要な二酸化炭素を血液に戻すのだ。これを内呼吸という。二酸化炭素を含んだ血液は静脈を通って心臓に戻り、再び肺に入って外気との間でガス交換をする。これが間断なく行われることでわたしたちの身体は生命を維持することが可能となる。「息」と「生きる」は同義だという説もある。

 呼吸に対して呼吸運動は鼻から空気を吸ったり吐いたりすることで、主として横隔膜や呼吸筋が行う。この運動はコントロール可能であるから訓練することができる。これが呼吸法だ。腹式呼吸は呼吸法の代名詞である。しかし、腹を意識しすぎると反対に浅い呼吸になる。なぜなら呼吸を行う肺は胸にあるからだ。腹式呼吸とは腹で行う呼吸ではなく、腹を利用してより深く行う呼吸のことである。

 腹式呼吸を容易に行う方法として仙骨呼吸がある。これは仙骨から息が入るとイメージする方法。すると丹田に気が集まる。身体の中心に生じた充実感を全身に膨らますのが仙骨呼吸だ。

 身体を風船とイメージしよう。腰掛けてゆったり背を伸ばす。仙骨から空気を入れる。その空気が身体という風船を丸く膨らます。腹だけでなく手にも足にも気が満ちてくる感覚。全身が一杯になったら口からシューっと吐き出す。これだけでいい。いつもよりずっと深く、ゆったりとした呼吸ができたのではないだろうか。無理せずに数回繰り返してみよう。

 それぞれに花火を待つてゐる呼吸 村越敦

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