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2011年9月28日 (水)

俳句とからだ 28

連載俳句と“からだ” 28


愛知 三島広志

仙骨 その2

仙骨の意味

旧字では仙骨を僊骨と書く。僊の字の旁は「笊から水が漏れる」ことを示している。そこから形を残して中身が抜け出るという意味が派生した。遷都は都の構造を残したまま都市機能を別の場所に移すことだ。僊(仙)人は肉体を残して魂が抜け出し、空を飛んだり雲に乗ったりできるよう修行した人のことである。羽化登僊とは羽が生えて仙人になり天に昇ることだ。

僊(仙)骨も同じ字を書くが、僊(仙)骨の僊は仙人を表すものではなく「動く」方に比重がかかる。僊骨(以後、仙骨と表す)は身体行動に先んじて動く骨なのだ。したがって身体動作にとって極めて重要な骨となる。
動作の要諦を表す時「腰を入れろ」と言う。ところが現実動作として腰を入れたら腰砕けになる。相撲であっけなく勝敗が決してしまったとき解説者が「腰が入ってしまいましたね」というのはこれである。「腰を入れる」とは「仙骨を上手に用いろ」ということに他ならない。優れた動作は仙骨より湧き出し、重力という最大パワーに則しつつ重心を移動し、時には大地からの反動を利用して身体を見事に操作することで生まれるのである。

 錦木の仙骨となり父を愛す 寺井谷子

坐る

 仙骨は腸骨と仙腸関節を形成する。この関節は不動結合だが微妙な弾力を有し、動作中はもとより呼吸の度にも動いている。その関節が歪み、固まるとさまざまな問題を生じる。例えば腸骨と上腕骨をつなぐ広背筋に問題が起こると肩の動きが制限され肩こりや五十肩の原因になりうる。それを予防するためにも仙骨の在り様を身体感覚として味わっておくことを勧めたい。

 硬い椅子に坐す。仙骨は直接床には当たらないがその延長として左右の坐骨が椅子に当たる。坐骨の形は逆三角形である。したがってWを想像すればいいだろう。理想的な腰掛け位は体重が左右の坐骨の頂点(Wの下の二点)に均等にかかっている状態だ。

 そこで実験である。上体を反り返し、お腹をゆっくり突き出してみよう。すると骨盤は前傾し腰椎は前弯する。反対に上体を前に屈めると骨盤は後傾し腰椎は後弯する。いずれの姿勢も長時間保つと椎間板や椎間関節に無理を強いる。前方と後方、左右どちらにも偏らず、体重をWの頂点で支えている状態が理想となる。その時仙骨は自然に直立し、背骨はしなやかに伸び、その上の頭蓋骨は重さを無くしたかのごとく浮くように定まる。なぜなら体重が重力線にきっちり乗り、一本の軸が巨木のように天に伸びているからだ。

 直立が農の憩ひや冬菜畑  森棟定子

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