俳句とからだ 25
連載俳句と“からだ” 25
愛知 三島広志
呼吸と肩凝り
呼吸は外界から身体へ酸素を取り込み、不要になった二酸化炭素を吐き出す一連の活動である。肺で行われる外呼吸と組織で行われる内呼吸がある。
生物は進化の過程で酸素を利用する術を身に着けた。本来、酸素は鉄を錆びさせるように身体にダメージを与える。老化や発ガンの素である。しかし生物はある酵素を産出することで酸素の害を減じることを可能とした。
呼吸の中心を担う内臓は肺であるが、肺に空気を取り込んだり吐き出したりする呼吸運動の能力はない。呼吸運動は胸郭(肋骨、胸骨、胸椎で形成された骨格)を開閉する肋間筋と横隔膜によって行われる。
一度、息を大きく吸ってみよう。吸うのは鼻からである。息を大きく入れると胸が広がる。肩も上がる。微妙だが頭骨はやや後ろに倒れ、腹が出て骨盤も動く。その時、横隔膜は下がって胸郭の陰圧が高まり、空気が流入してくる。その逆が呼気となる。
呼吸運動は他の内臓と同様、自律神経に支配され無意識下に行われているのでわたしたちは普段、呼吸や内臓を意識しない。ところが呼吸運動は意識的にもコントロールできる。深く、浅く、速く、遅く、あるいは休止。こうした制御は自律神経に対して可逆的影響を与える。ここに呼吸法の妙がある。
仰ぐとは胸ひらくこと秋の富士 岡本眸
肩凝り予防の呼吸
日常生活は自分のペースで進まない。人はいつも何かに追われ、息せき切って暮らしている。この状況が続くと交感神経が高まり緊張を生じる。心身ともに深く寛ぐのは難しくなる。こんな時、呼吸法を行うことで緊張の緩和を誘発することが可能である。
では簡単な呼吸法を紹介しよう。先月号で説明したように身体正中に軸を通す。肩の力を抜き首は柔らかく伸ばす。そして息を鼻から吸う。その際、空気が仙骨から入ってくるとイメージする。仙骨は背骨の一番下の三角の骨。お尻の真ん中にある。そこから真っ直ぐお腹に入ってくる実感があれば成功である。そこが丹田となる。丹田に空気が入ってきたらさらに胸まで一杯吸い上げる。数秒止めて、ゆっくり蜘蛛が糸を吐くように息を出す。鼻からでも口からでも構わない。これを苦しくない速さで数回繰り返す。しばらく普通呼吸をした後、また繰り返す。やり過ぎないことが肝要。整理体操の深呼吸のように両手を広げてもよい。
呼吸運動は深層筋を動かすので内臓のマッサージになると同時に酸素供給量を上げ、老廃物の排除を促進する。
以下の句には呼吸を深くするような豊かな広がりがある。
東大寺湯屋の空ゆく落花かな 宇佐美魚目
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