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2011年8月29日 (月)

游氣風信 No.206 2009. 5.18

2009年3月27日 (金)
鷹 四月号

俳句結社誌『鷹』が送られてきました。
『鷹』は先年亡くなった藤田湘子という方が創刊された歴史ある俳句雑誌です。2009年四月号で第46巻第4号だそうですから50年近い年月を刻んだ雑誌ということになります。

藤田先生は水原秋桜子の下で勉強された方で、指導力に定評がありました。現在は若い小川軽舟という方が主宰を受け継がれている精鋭集団です。しかしわたしは『鷹』とは何の御縁もありません。どうして郵送されてきたのか訝りながら封を開けました。

すると付箋が貼ってあります。開くとそこは「俳壇の諸作」というページ。筆者は辻内京子さん。驚いたことにわたしの俳句が鑑賞文とともに紹介されています。

 山彦が山彦を呼ぶ冬日かな 三島広志

 「藍生」一月号より。山に向かって「やっほう」と叫んだ子供のころの思い出は誰にでもあるだろう。「やっほう」と山彦が返ってくると嬉しくてまた「やっほう」と繰り返した楽しい経験だ。
 掲出の句は山彦が再びエコーする現象を詠んだものである。「山彦は山の神が答える声」というアニミズム的な発想や、自然の深遠な息づかいがこの句から感じられるのは、「山彦が山彦を呼ぶ」という措辞の手柄であろう。日本の原風景の持つ時間と空間の広がりを味わいたい句である。

身に余る高邁な鑑賞です。読み手がいいと詠み手が救われる実例。成程そんな読みもできるかと感心しきり。
 
この句はわたしが所属している俳句結社「藍生」の一月号に特別作品として巻頭に掲載された十句のうちの一つです。句の舞台は猿投山。名古屋の東郊外にある猿投山はオウスノミコトという大和武尊の双子の兄の墳墓が祭られていることで知られています。しかし現実に山彦を聞いた訳ではありません。現実に登った山での想像です。俳句は日常存問で日記のように詠むという人もいますが、創作ですから空想や捏造もあります。
そういえば『鷹』創刊の藤田先生の先生である水原秋桜子の句に
 
 高嶺星蚕飼の村は寝静まり 秋桜子

という高名な作品があります。これは信州と群馬の県境で作られた作品。蚕を飼っている村が深夜、寝静まっているという静謐な名句ですが、作者の解説によると作ったのは昼間。この句で作者は写生から創造へのきっかけを掴んだと書いていたはずです。手元に資料がないのでうろ覚え。俳句の表記も違っている可能性がありますがご容赦。

ともかくわたしの句が思わぬところで読まれ、掲載されていることに驚きました。文章を書く人は広く眼を光らせているものです。また、きちんと送って下さった『鷹』編集部の良識にも感謝します。

筆者の辻内京子さんは句集『蝶生る』で今年の俳人協会新人賞を受賞されました。これからが期待される方です。その句集から

 硝子戸は海の入口春の暮
 炎昼の階段掴むところなし
 大切な人の掌蝶生る

2009年4月 6日 (月)
俳句甲子園

昨夜、愛媛の村重さんから電話があり、今年も俳句甲子園の審査員を依頼されました。今年で三回目になります。

俳句甲子園は高校生による俳句の創作、鑑賞、ディベートの大会です。一昨年は愛知代表の幸田高校が準優勝しました。今年も高校生から勢いと鮮度を頂けると楽しみにしています。
日程は6月13日土曜日、詳細は不明。
俳句甲子園のHPは
http://www.haikukoushien.com/


2009年4月 9日 (木)
宮澤賢治 作品発見

宮澤家の蔵から地図の裏にメモされた賢治の作品が発見されたそうです。生前、全く無名だった宮澤賢治の原稿は弟清六氏が岩手県花巻市の実家の蔵で大事に管理保管されていました。空襲下でも窓や隙間に味噌を塗りこんで氏が死守されました。現在は花巻市の宮澤賢治記念館に収蔵されているはずです。したがって最早不明の原稿などは無いと考えられていました。ところがその蔵の建て替えで見つかったというから驚きです。

発見された原稿に書かれている詩は岩手の猊鼻渓の辺りの作品と考えられます。作品としての完結はしていません。以後、いずれかの作品に取り込まれた形跡もないようです。出先でふと思いついたことを手近の地図にメモし、そのまま忘れてしまったのではないかというのが研究者の見解です。

停車場の向ふに河原があって
  水がちよろちよろ流れてゐると
 わたしもおもひきみも云ふ
  ところがどうだあの水なのだ
 上流でげい美の巨きな岩を
  碑のやうにめぐったり
 滝にかかって佐藤猊岩先生を
  幾たびあったがせたりする水が
 停車場の前にがたびしの自働車が三台も居て
  運転手たちは日に照らされて
 ものぐささうにしてゐるのだが
  ところがどうだあの自働車が
 ここから横沢へかけて
  傾配つきの九十度近いカーブも切り
 径一尺の赤い巨礫の道路も飛ぶ
  そのすさまじい自働車なのだ

2009年4月16日 (木)
愛知学院大学モーニングセミナー
14日の朝、第37回愛知学院大学モーニングせみーなに行ってきました。午前7時から8時まで。朝早いのに会場には100名以上の方が集まって、熱心に講師の話に耳を傾けていました。
テーマは
「肝腎要の肝臓とはどんな臓器?」―肝に銘じようメタボとの関係―
講師は名古屋市立大学大学院 医学研究科 消化器・代謝内科学講師 野尻俊輔先生
肝臓の専門知識を簡潔に分かり易く説明していただきました。
かなり専門的な内容でしたが整理されていたためかとても理解しやすかった気がします。

肝臓の働きは
・糖 糖分の貯留(グリコーゲン)と放出を調整
・たんぱく アルブミン、血液凝固因子などの蛋白合成、アンモニアの代謝
・脂肪 コレステロールの合成、脂肪酸の代謝
・ビリルビン 壊れた赤血球から胆汁の生成
解毒や排泄
・薬物の解毒、アルコールの代謝
・細菌や異物、毒素を処理する
・ホルモンの代謝
など多岐にわたる。

肝がんによる死者が増えている。その80%はC型肝炎ウイルスの感染が原因である。
肝臓病が肝がんになる過程。

これらの説明の後、将来問題になってくるNASHの話。
NASHに関しては以前、モーニングセミナーのメタボの話でも取り上げられていました。
肝がんの原因疾患であるC型肝炎が減り、アルコールを控えることで肝臓病は減少するはずです。ところがそうはなっていません。そこで問題になってくるのがNASH。
NASHとは非アルコール性脂肪性肝炎のこと。
アルコールはほとんど飲まないのにまるでアルコール多飲者のように脂肪肝、肝炎、肝硬変となりやがて肝がんへ移行する
病気です。欧米では急速に増加し、日本でも将来そうなるだろうと懸念されています。
NASH患者の20%が10年で肝硬変になる。
肝硬変になると5年で20%が肝がんを合併する。
今盛んに言われているメタボ予防がそのままNASHの予防になるそうですから、食事や運動を意識して生活を構築する必要があるそうです。
詳細は愛知学院大学のHPをご覧ください。
http://www.agu-web.jp/~seminar/

当日の資料と講演ビデオが掲載されます。

2009年4月17日 (金)
哀悼 Tさん
昨日、長年訪問治療に伺っていたTさんがお亡くなりになりました。まだ70歳前ですが、闘病期間は20年以上、完全に寝たきりになって10年以上という大変な人生でした。

訪問開始は平成の声を聞いて間もなくでしたから、20年近く関わったことになります。その間、数回の入院時を除いて週に三回出かけていました。

Tさんは40代に入ってまもなくSLEという膠原病を発症し、その後数度の脳梗塞、薬の副作用による骨粗鬆症などに苦しみました。訪問当初は歩行訓練ができるくらいの状態でしたが、次第に困難となりついに寝たきり状態になってしまいました。しかし生来の明るさからデイサービスで人気者でした。

子どもさんのいないTさん夫婦は、奥さんが現役のころは昼に会社から戻ってはオムツを替え、また会社に行くという介護を長年こなし、退職後も音を上げることなくお世話をされました。腰痛に苦しむ一面もありましたし、高齢の母親の世話もしなければならないという厳しい毎日を過ごされたのです。

Tさんの明るい笑顔は奥さんの癒しでもありました。
近年は肺炎を病むことが多く、度々入院されましたが、その都度復活されていました。ただ今回の入院は呼吸困難を伴っており心配していました。嚥下性の肺炎ということで胃ロウという直接胃に栄養物を流し込むチューブを付けたのですが、その後炎症を併発し、ついに不帰の人となりました。

Tさん、長年の闘病ご苦労様でした。これからは大好きでもできなかったパチンコや釣りを楽しんでください。
奥さん、お疲れ様でした。さびしいでしょうが、今後のご自身の人生を大切に。

2009年4月22日 (水)
佐藤勝治さんのこと
宮澤賢治関連のメールマガジンからあるブログ壺中の天地へ飛んで行ったら、佐藤勝治さんのことが書かれていました。
佐藤さんのことは以前HPに追悼文を書きました。
游氣風信 34号そのことをコメントに残したところ、ご丁寧にお返事をいただきました。思えば人生、色々と不思議な出会いをしているものです。やはり人は人間としてさまざまな関わりの中でしか生きていけないのですね。


コメント
ゆうき様
 ブログにお書き下さいまして恐縮しております。
 先生の「遊氣」での医療や俳句に門外漢な小生は、いつも感心して拝見しておりました。游々雑感で「シンコク」や「コクゼイ」を読んだときには、プロフィールのこわさから 少し解放されました事を思い出します。(A;´・ω・)アセアセ
 先生は宮澤賢治学会には早くからの会員のようですね。(会員取得番号より)賢治が医療についてどのように考え、どの様な行動をとられたのか具体的なことがお解りでしたならお教え下さりたく思います。大変失礼な数々、ご容赦ください。

2009年4月27日 (月)
フランス紳士M氏
治療室に定期的にいらっしゃるフランス紳士M氏は大学でフランス語を講じておられます。大学の帰りに来られる日はネクタイをしてジャケットを羽織り、紳士然とした装い。
「カッコいいですね、フランス製ですか?」
「ノン、岐阜のオンセンドー。ネクタイ500エン、シャツ1000エン、ブレザー2000エン、安いね」
「・・・・・・・・・そうですか(汗)」
やはり洋服は西洋人向けの服飾。
安くたって雰囲気が紳士。
M氏、決して二枚目ではないのですけど、雰囲気がカッコいいので不思議です。

2009年5月10日 (日)
コンビニ弁当要注意
リサイクルはその言葉の美しさとは裏腹に危険を伴うことを忘れてはいけません。紙をリサイクルするためにはたくさんの化学反応を必要としますから、通常の製紙以上に薬品を使うことになります。つまり公害の危険性を伴うのです。
コンビニ弁当の残りを集めて家畜に与えるというリサイクルも始まっています。狂牛病は食品の再利用で起こったことを忘れてしまったのでしょうか。この危険性を訴える人は以前からいました。
たとえば以下のブログ。
http://takedanet.com/2009/05/post_b778.html
この警鐘は真摯に聞くべきでしょう。

ニュース短信 コンビニ弁当,危険になる!
「コンビニ弁当が,きわめて危険な弁当になった.
狂牛病というのがあるが,あれは「屠殺したウシのガラがもったいない」として,それをリサイクルし,飼料にしたことによって起こった。その後,「共食い」は動物によらずに狂牛病に似た病気を起こす」ということが判ってきた.人間ではクールー,ヒツジではスクレイピーである.
すべて狂牛病のように悲惨な死を遂げる。
コンビニ弁当の残りをブタやトリのエサにしているらしい。「食品リサイクル」と言っているが,まさに狂牛病の発症と同じ状態である。
つまり,まだブタの肉をブタに食べさせたら狂豚病になるか,トリの肉をトリに食べさせると狂鳥病になるのかは判っていない.少なくとも研究結果は発表されていない.またそれが人間に感染するかも不明である。
でも,私たちは過去の誤りを参考にする事ができる.つまり,豚肉や鶏肉,またはそれらの加工食品や肉汁などを使用しているコンビニ弁当を,ブタやトリに食べさせることはきわめて危険であることを知っている。
それで育てたブタやトリの肉がコンビニ弁当に入っているのだ.危険度は,食品添加物や遺伝子作物の比ではない.危険きわまりない.
私は大手コンビニが弁当を,ブタやトリの飼料として使い出したというニュースに接し,コンビニ弁当を買うことを止めた。
国民の健康は,環境省や大手コンビニエンスストアーのものではない.厚生労働省もコンビニ弁当が安全だとはアナウンス
していないので,とにかく当面,「狂豚病にならない」という研究結果をこの目で見るまではコンビニ弁当を買わないことにした.
特に子供には食べさせないようにしよう.
(平成21年5月10日 執筆)武田邦彦
(C) 2007 武田邦彦 (中部大学) 引用はご自由にどうぞ」

2009年5月13日 (水)
愛知学院大学モーニングセミナー 心臓
昨日、朝7時からの愛知学院大学モーニングセミナーに出かけました。今回のテーマは心臓。
「あなたの胸キュンは大丈夫!?」
―心臓の鼓動を考える―
講師は名古屋市立大学大学院医学研究科
心臓・腎高血圧内科学 大手信之先生
詳細は近日中に愛知学院大学のサイトに動画や資料が掲載されますからそちらをご覧ください。
http://www.agu-web.jp/~seminar/

心臓は自覚されないほうが健康であること。
放置してよい不整脈と危険な不整脈があること。
必要なら薬や外科的処置が奏効すること。
心臓疾患で怖いのは心不全や心筋梗塞だが、脳卒中を誘発することを忘れてはいけない。
冠動脈は70%狭窄しないと症状が出にくいこと。
高血圧、高血糖、高脂血症は危険要因であることに間違いない。

などの話を映像を見ながら説明していただきました。
来月は「サブプライムローン」の話。
7月はたかべしげこさんの朗読で「なめとこ山の熊」(宮澤賢治)だそうです。

あとがき

千種公園で見かけたコゲラ。小さい啄木鳥です。
枝の真ん中に何とか映っています。
http://h-mishima.cocolog-nifty.com/yukijuku/2008/12/post-fbd6.html#search_word=コゲラ

大阪、神戸で新型インフルエンザが拡大しています。通年、日本ではインフルエンザに罹患する人が1500万人、亡くなる方が15000人。死亡率が0.1%。今回のインフルエンザは死亡率が0.4%。通常の4倍です。
特徴として若い人が多く感染、発病しています。これは過去に似たウイルスが流行し、年長者はある程度の免疫を持っているからだと考えられています。しかしウイルスは突然変異します。神経質にならないよう健康状態を保ちながら衛生に努めましょう。
東洋医療では内因(内面の問題)と外因(環境の変化)
に不内外因(生活スタイル)の偏りが病気を生むといいます。心配しすぎは内面を傷めますから、極力穏やかに、健康に留意した生活を心がけましょう。

以下のサイトは参考になります。
感染症診療の原則
http://blog.goo.ne.jp/idconsult
(游)

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