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2011年8月20日 (土)

游氣風信 No.170 2004. 2. 1

スジとツボの健康法

名古屋市に高年大学鯱城学園という60歳以上の方の学習の場があります。元気で意欲的な高年者が二年間在籍して、熱心に勉強されているのだそうです。

二月の六日と十三日、縁あってそこで講師をすることになりました。題して「スジとツボの健康法」。恩師増永静人先生の著書のタイトルです。

わたしなりに講義の準備をしましたので、ここに一部加筆訂正して紹介します。

昨年一年間お勉強と称してこの『游氣風信』に12の経絡について書きましたが、くしくもその総集編となりました。内容はずっと簡略で分かりやすいものとなっています。

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わたしたちの身体には経絡(けいらく)という12のスジとそれに関連する経穴(ツボ)があります。これらは西洋医学では解明できていない存在ですが、体験的にも実験的にも実感できる確かなものです。

中国医療はこのスジとツボの調整を根幹として成立しています。

ものごとはスジを通し、ツボにはまっていないと成功しませんし、話のスジが通り、ツボを得た表現でないと理解もできません。健康法のスジとツボは、生命の本質をとらえていないと、一部の人には良くても万人が利用することはで
きません。この講座では健康法のスジとツボを学びます。

(補:スジとかツボということばは物事を考えたり行動したりする際の要点を表すことばとして一般化しています。漢方が身近であった時代の名残です。要点を表すことばにはカンとかコツとかミソなどもありますね。

経絡は医療だけでなく、武術や舞などの身体技能全般に関係していました)

○身体のスジ(経絡)とツボ(経穴)

中国医術の身体観

 中国では古来わたしたちの身体は大きな環境である大宇宙に対し、小さな宇宙(小宇宙)であるという身体観を伝えてきました。この思想はわが国には大宝律令以前に輸入され大きな影響を与えました。いのちは単独で生存することはできません。わたしたちは、いのちを包んでいる外の環境との交流によっていのちを保ち、次代に引き継いでいるのです。

(補:生物とは自己保存と種族保存するものです。これは単細胞の生物から多細胞のヒトにいたるまで同じことです。いのちは環境物質を膜によって区切ることで単体の生命体として存在していますが、常に環境物質を取り入れないと存続できません。小宇宙である所以です)

海と陸と空

 わたしたちの身体は外の環境を内の環境に取り込むことで生存しています。
肺(呼吸器)は呼吸を通じて空と交流し、胃腸(消化器)は摂食により大地の恵とつながります。さらに生命の誕生した海は血液やリンパ(循環器)として体内に蓄えられました。血潮と言う何とも魅力的な言葉もあります。このように生命体は外の世界との調和と交流を保つことでいのちを育んでいるのです。

それらの調整の中心にあるのがスジとツボです。健康法はこのスジとツボを活用することで効果的になることでしょう。

(補:地球環境を大雑把にまとめると空と陸と海になります。体内の空とは肺を中心とした呼吸器、体内の陸は腸を中心とした消化器。そしていのちの生まれた海は血液の循環器。このように考えるといのちと環境の関係が明瞭になると思われます。海の成分と血液成分、さらには植物の血である葉緑素、いずれも大変似た構造だそうです)

からだはまるごと一つ

 身体は手や足や胃や心臓などの部分や部品の寄せ集めではありません。両親から受け継いだひとつの細胞が60兆に分裂して成り立っています。もとはひとつだったのです。それらが効率を求めてさまざまな組織や器官に分化しました。しかしそれらは絶えず全体の調和を保っていなければなりません。スジはその調和を維持する筋道なのです。そしてツボはその調整点です。

 (補:解剖図になじんだ現代人はどうしても身体を部分で考えます。肩が痛いと肩だけの問題だと思いがちです。しかし肩を支えているのは背中ですし、それは腰や脚に乗っかっています。さらに肩からは首が伸びて、両腕がぶら下がります。単独で存在する部分というのはないのですね)

○12のスジ

 内臓の名前を冠された12のスジが全身を巡っています。これらのスジはいのちの働きに関連する生理作用や運動作用、感情などに関わっています。

 (補:内臓の名前は西洋医学が入ってくるはるか昔からありました。東洋医療の用語を西洋医学の用語に流用したのです。ですから同じ「肺」ということばでも東西の医学では相当に異なったものになります)

肺 
胸から親指先まで 呼吸に関連 天の気を取り込む 雰囲気を感じ取る 悲しみに関連
大腸 
人差し指から肩を通って鼻まで 呼吸や排便 皮ふに関連 深呼吸をする時伸びるスジ 

胃 
眼とこめかみから喉を通って乳頭を下り、太もも前面から脛の外側、足の人差し指まで 食物摂取 噛み飲み込み消化する 地の気を取り込む 欲望に関わる
脾 
足の親指から脛や太ももの内側を昇って腋の下まで 消化腺に関連 糖尿病や膝の痛み 思いに関連 万歳をすると伸びるスジ

心 
腋の下から肘の内側を通って小指の先まで 心 精神の要 喜びに関連
小腸 
小指から肘の内側を通って肩の裏、肩甲骨を経て頚を昇り耳まで 食物を栄養に転換して吸収 腕組みをすると伸びるスジ

膀胱 
目頭から頭、後頚を経て背骨の脇を下り、太ももやふくらはぎの裏側を通り足の小指の先まで 背骨を支え自律神経を調整する
腎 
足の裏から脛や太ももを上り腹の中心やや外を通って鎖骨内端まで ホルモン系の調整 元気(親から受け継いだいのち)の宿るところ 驚き、恐れに関連
 前屈すると伸びるスジ

心包 
胸から腕の内側を通り前腕の中央、手のひらの真ん中を通り中指先まで 心臓などの循環機能 両腕を左右に広げると伸びるスジ
三焦 
薬指先から腕の後側、肘頭、肩を経て耳の裏から眉毛の外端まで リンパ、免疫など防衛機能 熱を焦がして体温を維持する 自分を抱くと伸びるスジ

胆 
目じりから側頭部後頚部、肩を通り体側を下って足の薬指の先端まで 関節や筋肉などの支持器官の運動に関与 肝っ玉 肚 決断を生む 
肝 
足の親指から足の内側を経てわき腹まで 行動力の源 解毒 怒りに関連 身体を捻ると伸びるスジ

○ツボ
 ツボは通常はつぼんでいる。必要に応じて現れるが入り口は警戒してつぼんでいる。壺・莟・蕾・窄と語源が同じ。上手に触れないと開かない。

経穴は中国の名前。穴も八の字のごとく入り口が閉じている。

(補:ツボはいつもそこに存在しているわけではありません。身体の状態で顔を出したり引っ込んだりしているのです。丁寧に触れるとつぼんだ口が開いてぴたりとツボにはまることができます。ですから知識としてツボを覚えるだけでは不十分なのです。いかに触れるか。これが肝要)

重要なツボ(治療・診断・予防)

古典的には全身に365穴あり、次々に新穴が発見されている。

肺経  中府 尺沢 列缺 少商

大腸経 合谷 手の三里 曲池 迎香

胃経  地倉 気戸 天枢 梁丘 足の三里

脾経  隠白 商丘 三陰交 漏谷 血海 腹結 大横 

心経  極泉 神門 少府 少衝

小腸経 少沢 後谿 養老 肩貞 肩外兪 聴宮

膀胱経 睛明 天柱 風門 腎兪 委中 承山 

腎経  湧泉 照海 復溜 兪府 

心包経 曲沢 げき門 内関 労宮

三焦経 中渚 陽池 外関 天よう 絲竹空

胆経  瞳子りょう 風池 肩井 居りょう 丘墟

肝経  太衝 中封 曲泉 

その他

督脉(大椎 百会 神庭) 

任脉(会陰 曲骨 気海 水分 だん中)

四総穴

頭項・・・列缺(れっけつ)

面目・・・合谷(ごうこく)

腰背・・・委中(いちゅう)

肚腹・・・足の三里(あしのさんり)

(補:古典に書かれている四つの重要なツボ。それぞれの部位に総括的に効果があるとされています。列缺は手首の脈のところで、手首のしわから指三本肘寄り、合谷は手の親指と人差し指の付け根のところ、委中は膝の真裏、足の三里は膝皿の下外側です)

○ツボ刺激の方法

指圧

指圧の三原則
垂直圧・・・皮ふやコリに垂直に圧を加える
持続圧・・・通常数秒間同じ圧を持続する
支え圧・・・身体を持たれかけて支え合うように加圧する圧を加える反対側から支える

いずれも精神集中して行う

触(ふ)れると触(さわ)るは異なる
触れるとは相手の中に染み入るように手を当てること
心に触(ふ)れる
触(さわ)られるとシャクに障る

あん摩・マッサージとの相違
あん摩は中国で生まれ、源流はインド 経絡の気の循環を助ける
マッサージは西洋医学の生理学血液循環学説に基づく
指圧は中国のあん摩の圧迫法と西洋の神経学説に基づく脊椎療法、それに日本
古来の医療術を元に大正時代に生まれた

経絡体操
おおらかに のびやかにスジをのばす
深くしみじみと呼吸しながら行う

お灸
せんねん灸 電気温灸器 ドライヤー


爪楊枝を10本束ねて皮ふが赤くなるまで軽く叩く

摩擦
皮ふを赤くなるまでさする

参考図書
『スジとツボの健康法』増永静人著 潮文社 
増永静人

1925年広島県生まれ。京都大学哲学科で心理学を専攻。卒業後、父祖の業である指圧界に入り、実技を修める一方古今の文献を読破して指圧療法の理論の確立につとめた。

「経絡というものは人間の生命、経絡の中に生命がある。これは善い。これは悪い。と人間はそれを分けて考えるがその出発点は間違っている。歪みは悪ではない。人間歪むところに働きがある。善悪という歪みができてはじめて人間という存在が成り立つわけだ」(増永先生が亡くなる半月前、恵子夫人が口述筆記したもの)

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