游氣風信 No73「年頭に当たって」
三島治療室便り'96,1,1
≪游々雑感≫
年頭に当たって
昨年は実にいろいろなことがあった年でした。
一月十七日の阪神淡路の大地震。
狂信的集団による無差別テロ。これは一昨年の松本事件に続いたものでした。
新卒者の就職不況、銀行の破綻などの経済活動の沈滞。
高齢者対策、医療や年金などの福祉の限界。
政治の混迷。
戦後五十年の集大成がこれではとても寂しいことですが、しかし、わたしたちの生 活は未来に向かうのみです。
未来に向かって新聞等をにぎわせている大きな話題もあります。
昨年はインターネット元年と呼んでもいいほど、新しい情報社会の幕開けとなりま した。まだ、実体が明瞭には把握されていませんが、およそ世界のコンピューター一 千万台が電話回線を介して繋がったということは、産業革命に匹敵する情報革命のた だ中に放りこまれていると言っても過言ではありません。考えてみてください。何も 無かった家に突然テレビがやってきた時の驚き。今回のインターネットは電話とテレ ビとビデオとステレオが合体してやってきたのです。それはテレビのような単なる受 け身ではなく、こちらからさまざまな操作や選択ができるというものです。
テレビ電話もインターネットを介して実際のものとなり、自宅のボタンひとつでル ーブル美術館を拝観でき、アメリカの図書館の百科大事典が操れる、さまざまな商品 が国家の定めた通貨でなく電子マネーと呼ばれる形で売買される時代。それが現実と なってきているのです。わたしたちは目に見えない空間に脳と社会を共有していると 言っても過言ではないでしょう。
すでにインターネットと電話回線を結んでいる人も、いずれ参加してみようと思っ ている人も、全く興味が無いという人も否応無くこの空間脳の世界に住むことになる のです。いえ、もう住んでいるのです。しっかりとした自分の足で、目で生きていく ことがこれほど要求される時代もなかったのではないでしょうか。
そう考えるとインターネットがはたして明るい話題と言い切れる自信はなくなって しまいますが大いなる可能性があることは確かです。
今月号で≪游氣風信≫も月刊で七十三号、七年目に入ります。わたしにとって≪游 氣風信≫はすでに自分自身の「行」のような存在になってしまっていますので、また 今年一年頑張ってみます。
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