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2011年2月22日 (火)

游氣風信 No49「ほほえみ 」

游氣風信 No49「ほほえみ 」

三島治療室便り'94,1,1

 

E-mail h-mishima@nifty.com

http://homepage3.nifty.com/yukijuku/

三島広志


<游々雑感>

ほほえみ

 人間関係を円滑にする世界共通の記号は「ほほえみ」であることに異論はないでし

ょう。ただしこの「ほほえみ」は左右対称のニコニコ顔であることが条件です。片側
だけの唇が吊り上がると皮肉っぽい「嘲笑(ちょうしょう)」になってしまいます。

 生まれたばかりの赤ちゃんがなんの理由もなくニコッと笑うと誰でも心なごやかに
なるものです。これとて洋の東西を問うものではありますまい。(あの笑顔は「どう
か夜泣きしても捨てないでください。」と本能的に愛想をふりまいているという皮肉
な見方もあるそうですが。)

 ところが「ほほえみ」は他人との関係作りだけでなく、自分の健康にもとても有意
義に働くという記事が年末の読売新聞に出ていました。それは以前から体験的に誰も
が感じていたことですが、脳波との兼ね合いから実証されたものです。その記事を紹
介しましょう。

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笑顔作れば気持ちも楽しく

眼輪筋の耳側を動かし脳活性化 米の心理学者が研究
読売新聞平成5年12月

 意図的にでも笑顔をつくれば、気持ちも楽しくなる・・・・。目の回りの「眼輪(が
んりん)筋」という筋肉を意図的に動かすと、脳内の楽しい感情に関連する部分が活
性化されることが、米国の心理学者の研究でわかった。
 カリフォルニア大学人間相互作用研究所のポール・エクマン博士らの研究で、米国
の雑誌「心理科学」にこのほど発表された。
 楽しい時は、眼輪筋とほおの大頬骨(だいきょうこつ)筋が動くという説を唱えた
のは、フランスの神経学者デュシェン。1886年のことだが、博士らは忘れ去られ
ていたこの研究に着目、眼輪筋をさらに詳しく調べた。
 その結果、眼輪筋の鼻に近い側は意識的に、耳に近い部分は意識的に動かせない人
もいた。そこで、眼輪筋の耳側が大頬骨筋とともに動く場合、つまり作り笑いではむ
ずかしい筋肉の動きを「デュシェン標識」と名付けた。
 学生約50人を調べ、耳側を意識的に動かせる14人に、この標識を含む笑顔、含
まない笑顔など様々な表情をさせ脳波を測定した。楽しい時は脳前方の左半球が、不
快な時には同じく右半球が活性化され、アルファ波という成分については低下するこ
とが知られいてる。
 学生たちに、デュシェン標識を含まない笑顔を作らせても左右の脳波には差は出な
かったが、意識的にこの標識を含む笑顔をさせると、楽しい時と同様に左半球が活性
化された。つまり楽しいと感じていることになる。

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 眼輪筋は眼の回りを取り巻いている筋肉で、大頬骨筋は口の角から目尻に向かって
走る筋肉です。笑顔を作ると目尻にしわが寄るのは眼輪筋の収縮のため皮膚が引き寄
せられるからであり、口の角がニコニコマークのように吊り上がるのは大頬骨筋の作
用です。ともに表情筋といって脳神経の内の顔面神経の支配を受けています。顔面神
経麻痺になると口が垂れるのはそのためです。

 「悲しいから泣くのではなく、泣くから悲しいのだ。」という文学的表現がありま
すが、それに習えば「楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しいのだ。」とも言え
ます。新聞の記事はそれを証明しているのではないでしょうか。

 楽しくないときでも、無理やり笑顔をつくれば、脳の中は楽しく感じてくれるよう
です。 近年、からだとこころの相関が言われるようになりましたが、この研究など
もその一つの証明となるものです。もっとも以前から誰もが経験的に知っていたこと
であって、それを科学的に証明したところに科学の科学たるゆえんがあります。その
成果をどう活用するかは個人のレベルでも十分考察可能ですから、科学の成果は出来
る限り我がものとしたいものです。

 ボクシングの選手がリングに上がって闘争心を高めるために激しい腹式呼吸をして
いますが、あれはホルモンのアドレナリンを高め、交感神経を刺激し戦いに備えるの
です。そうすると痛みをあまり感じないし、出血も少なくなるのです。試合中、トレ
ーナーは気力で血を止めろなどと無茶を叫んでいますが、闘争心が萎えると出血がひ
どくなるのは経験的にも生理学的にも正解なのです。
 お相撲さんが立ち会い前に顔を叩いたり、塩を嘗めたりするのも同じ理由です。

 今のは戦いの場の例でしたが、反対にやすらぎの場を生み出すために素敵な笑顔を
作ることは有効だろうし、わたしたちのからだにも大変有益なことと理解できます。

 楽しい感情は脳の間脳という自律神経やホルモンの中枢に働きかけて、全身の免疫
作用を高めることが言われています。やすらぎ療法やいきがい療法はこれを応用した
ものです。
 ある外国人が難病(病名を忘失しました)に罹ったとき、とにかく悩み沈んでいて

はいけないと、朝から晩まで笑える環境作りをしたそうです。愉快な本を読みこころ
を和ませ、ばかばかしいテレビ番組を見て大笑いし、友人たちの楽しいときを過ごし・
・・。そうするうちに完治したということで話題になり、新聞などでも取り上げられ
ました。確か日本にも講演に見えたはずです。

 禅に拈華微笑(ねんげみしょう)という有名な言葉があります。
 お釈迦さんが大勢の説法を聞きに集まった人の前に手に持った花を突き出されまし
た。すると弟子の一人迦葉(かしょう)尊者ひとりがほほえんだそうです。それを見
たお釈迦さんは「わが法門は文字や言葉では伝えられないものだ。今、迦葉に伝える。
」と言われたそうです。
 深遠な話ですからよくわかりませんが、お釈迦さんの心を感じとった迦葉尊者のほ
ほえみという行為が以心伝心したのでしょう。言句に表せない部分を「ほほえみ」と
いうからだからわき出る表情が伝え会うのです。

 「ほほえみ」は先程の新聞記事のように現象的には顔の筋肉の緊張に過ぎませんが、
それを生み出すものはからだの奥底からにじみ出てくるような気がします。顔だけで
笑うと取り繕ったようなぎこちないものになってしまうでしょう。そのにじみ出てく
るようなもののことを「気」というのです。これは余談です。

 メビウス気流法(坪井香譲氏による)というからだとこころと空間が刻々と生成変
化していく過程を、身体の動作や呼吸を通じて根源的に洗い直していく身体技法体系
があります。書いているこちらもよく分からないのですが、実際に一つの動作を行っ
てみれば体感することは可能です。古来からの祭りの意味を今日から未来にかけて見
据えたものと簡単に表現してもあながち大間違いではないと思いますが、それでも説
明にはなっていないでしょうね。
 そのメビウス気流法の基本[身体の文法]の中に〈全身が一つになって微笑む〉と
いうのがあります。ここでも「ほほえみ」です。本(メビウス身体気流法 生命の混
沌と生成 坪井香譲著 平河出版社)によれば、
 正中線が自覚され、全身が柔らかくなると身体の中から自ずと微笑が湧いてくるの
である。その時は息も深く、全身で周囲の空間と融和しつつ行っている。あたかのそ
の空間それ自体が呼吸しはじめるようだ。呼吸なき呼吸。この時からだはからだであ
ることを超えている。

 ますます分からなくなってしまったかもしれませんがともかく「ほほえみ」はから
だの奥底から湧き出るあるいはにじみ出るものでそれが結果として笑顔という表情を
生み出すのです。
 おもしろいのは、逆につらいときなどにともかく笑顔を作るとそれが遡行してから
だの中にしみこんでからだを楽しい方向に導こうとするものだということです。しか
も他人の笑顔さえも自分のからだの中に大きな影響を及ぼすということです。

 寝たきりの人で自分は何もできないからとにかく笑顔だけは絶やさずにいたいとい
う方がみえますが、それはじつに素晴らしい行為と言えますね。
 日本ではとかく「男は三年に片頬」などと言って笑うことを戒められてきました。
しかしぎすぎすした不景気な世の中です。「ほほえみ」を大切にしたいものです。と
りわけ笑顔の苦手なわたし自身の初春の抱負でもあります。

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