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2011年1月22日 (土)

游氣風信 No5「だちかん 虫歯」

游氣風信 No5「だちかん 虫歯」

三島治療室便り'90,5,20

三島広志

E-mail h-mishima@nifty.com

http://homepage3.nifty.com/yukijuku/

≪游々雑感≫

ダチカン

 尾張地方のお年寄りは何かというと「ダチカン」と言います。
 「ものを粗末にしてはダチカン。」
 「小松の奴、また打たれやがった。星野もあそこで小松を交代せなダチカン。」
 「うちの嫁ごはダチカン。ちょっとも礼儀を知れへんでよぉ。人様に会わすこともでけせん。」
と、こんな風に使うようです。

 広島生まれで名古屋育ちの私の周囲には、生粋の名古屋弁を話す人がいなかったので、この仕事に入ってお年寄りの相手をする機会が増えてからは、言葉でとまどうことがよくありました。

 ある脳卒中のおじいさん。
 「あっくいが着かんで、うまく歩けれん。」(あっくい・・踵)
 さる膝の痛いおじさん。
 「つとはらが痛くてつくなえん。」(つとはら・・ふくらはぎ。つくなえん・・しゃがめない)
 神経麻痺のおじいさん。
 「手が言うこときかんでダチカン。」
そう、これが謎のダチカンです。

ダチカンは<埒があかん>か
 埒(らち)→馬場の囲い。物事の区切り。
 埒が明く→はかどる、かたがつく、おわる、すむ。
 埒が明かない→事が縺れたままではかどらない。
 埒もない→順序が立たない、乱雑である、つまらない、ばかばかしい。
 不埒→法の定めた枠に入らない。けしからぬ。
    [使用例]ひと~つ 人の世の生き血を吸う ふた~つ 不埒な悪行三昧
         み~つ 醜い浮世の鬼 退治てくれよう桃太郎
 埒外→枠の外、専門外。
 埒内→守備範囲内。
 放埒→馬が囲いを離れること。気ままに振る舞う。
 手元の辞書をいろいろ引いてみたら以上のようなことが書かれていました。これらから推測すると、<埒があかん>が訛って<だちがあかん>。それがさらに変化して<だちかん>になったと考えられます。
 その上さらに新発見がありました。

<埒もない>から<ダシモナイ>へ
 庭木の大好きな患者さんがいます。その方にお聞きした話では、苔にもいろいろあってスギゴケは貴重だが、ゼニゴケはダシモナイ、庭木でもモッコクは庭木の王様に値するが、モチノキなんかはダシモナイということです。
 この<ダシモナイ>は間違いなく<埒もない>の変化、訛りだと言えます。埒もないの意味は先に書いたようにつまらない・ばかばかしいですから、ゼニゴケはつまらない・モチノキなんかはばかばかしいという具合にダシモナイとぴったり入れ替わります。

 ダチカンは区切りがあっても変化がない、発展が見られない時に使用され、ダシモナイは反対に区切りがなくてだらしがないの意味で使われるようです。
 いずれにしても今日では両方とも年配者の愚痴の中でしか聞かれない言葉になりつつあります。

 はたしてこの推測が的を得ているか、はたまた空振りに終わっているか、いずれにしても私には埒外の問題でした。

<折々の健康>
 6月4日は虫歯予防の日。64をムシと読ませるのです。虫好きの私なら昆虫愛護の日とでもしたいところですが・・・。
 似たものに3月3日の耳の日、8月7日の鼻の日、10月10日の目の日があります。33で耳、87で鼻、10を横に引っ繰り返すと眉と目になるので目の日というわけです。
 さらに8月9日は何の日かお分かりですか?なんとハリ・キュウの日です。8をハリと読ませるところに無理があります。

 「○○の日」というのは年間を通してみると大変な数だそうです。実際に何らかの由来があって制定された日もあれば、単なる駄洒落・語呂合わせもあり、今までのは後者ですね。

虫歯と歯周病(歯槽膿漏)
 全国的に虫歯が減っているそうです。歯医者さんや歯科衛生士さん、保険の先生などの努力により歯磨きの励行、甘いお菓子の制限、早めの検診の重要性が一般に広く浸透していきました。それによって治療より予防が大切だとの意識改革が効果を上げてきたのでしょう。

虫歯の原因と歯磨き
 歯磨きのCMですっかり有名になったミュータンスなどの細菌が直接の原因です。
ミュータンス君のお食事がお菓子やジュースなどに含まれる蔗糖で、子供達の嗜好と細菌の嗜好の一致が虫歯の原因だったわけです。
 ミュータンス君は蔗糖を分解して酸を作り、この酸が歯を溶かしてしまうのです。

 「俺は生まれてこの方、金輪際歯など磨いたことなどないけど、虫歯など一本足りとも無い。」と豪語する方もありますが、そんな方は両親に感謝してもらうほかありません。
 お酒に強い人、弱い人があるように、虫歯菌にたいする抵抗力も個人差が相当あるようです。人並みの歯の持ち主でしたら、予防のために歯ブラシを用いたほうが良いようです。

 ミュータンス君はプラーク(歯垢)に住み着いていますから、ブラシでそれを洗い落とし、住みにくくしてやることが歯磨きの目的なのです。そのためには歯磨き粉は必要ありません。逆に磨き粉による歯や歯茎の磨耗の方がはるかに弊害があります。
 さらに、歯磨き粉は合成洗剤と同じものですから、体にとっても害があるのです。
歯磨きの後、食べ物がまずくなるでしょう。薬剤に汚染されて舌の味覚が麻痺してしまうからです。
 なお、唾液自体に酸を中和して虫歯になりにくくする作用があります。良く咬んで食べることは胃腸だけでなく、虫歯予防にも役立つわけです。

歯周病
 歯槽膿漏のことです。虫歯と反対に増えています。以前は歯槽膿漏になったら歯を抜いていましたが、今では極力抜歯せずに治療しようと改善してきたようです。
 そのための処置として一般的なのが歯石の除去とブラッシングです。熱心な歯医者さんにかかるとその人に合わせたブラッシングを指導してくれます。歯並びや病状が一人一人違いますから、自己流ではどうしても磨き残しがあるからです。中には食べ物の指導まで徹底的にしてくれるドクターもいます。
 歯石は歯医者さんで除去してもらうしか方法はありませんが、技量の差は鍼灸と同様大きいようです。

歯周病自己診断表(by岩山幸雄)
軽症
 歯磨き時の出血  歯肉がふくらむ    歯肉が赤い
中程度
 歯が少し動く   歯肉が痩せてくる  冷たい水がしみる
重症
 葉が伸びてくる  あちこち腫れる    かなり歯が動く   口の中が粘っこ
 い  口臭がする  歯と歯の間に隙間ができる

上記の症状で気になる方は、信頼のおける歯医者さんに検診を受けるようお勧めします。

参考図書「図解歯槽膿漏は歯ブラシで治そう 岩山幸雄 力富書房」

<今月の詩歌>

ころがりしカンカン帽を追うごとく
          ふるさとの道駈けて帰らむ            寺山修司

 俳句から短歌、詩、演劇と生き急いだ天才寺山修司の青年時代の短歌。ふるさとは心の中で美化された<なつかしみ>。危険な薬のように精神を安定させてくれる。憎しみと共にふるさとを後にした人でさえ、人生の浮標(ヴイ)のように回顧する。
 「ぼくは/世界の涯が/自分自身の夢のなかにしかないことを/知っていたのだ  “懐かしのわが家”より」。
 寺山はふるさとを夢の中でしか見ることができなかったのだろうか。しかし、誰でも帽子を追いかけて行く先にふるさとを見ることがある。そしてそこには少年時代の僕が・・・。

<後記>
 沖縄はすでに梅雨の入り。雨の多い湿っぽい日がやって来ます。気持ちまでカビを生やさぬように気をつけましょう。
 歯は健康の入り口ですから、1日30分位ブラッシングしたいですね。私は風呂の中でやっています。

(游)

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