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2011年1月25日 (火)

游氣風信 No31「在宅Oさん 高血圧」

游氣風信 No31「在宅Oさん 高血圧」

三島治療室便り'92,7,1

 

三島広志

E-mail h-mishima@nifty.com

http://homepage3.nifty.com/yukijuku/

《游々雑感》

Oさんの平穏を破るもの

 仮にK市としておきましょう。
 OさんはそのK市の中心部、民家の密集したところに住んでいます。年の頃なら古稀前後。

 わたしが初めてOさんの家に往療した今年の初め、彼女は鼻から流動食を入れるための管を付けたままにしていました。細いビニール管がおでこに張り付けてあり、その先が鼻の穴に入っていたのです。もう一方の管の端っこは上から流動食を入れる管と接続するようになっていました。
 食事時にはその管に流動食の入った器を連結して鼻から直接胃に落とすのです。

 看護婦さんでないと鼻から食道につながった管の抜き差しはできませんから、普段は海に潜って漁をする人が息継ぎの管(シュノーケル)をくわえたような感じで、ベッドに横たわっていたのです。もっともくわえるのではなく、鼻の穴に通してあるのですが。
 その当時まだ食事を上手に取ることができず、うっかり気管に入って肺炎を起こすといけないので、こういう処置がしてあったのです。
 しかし現在ではすっかり良くなってテーブルを付けた車椅子に座って普通食を食べています。

 脳卒中で倒れた彼女はその後、転倒で足を折ったり、肺炎を起こしたりで、入退院を繰り返していたのです。けれども、わたしがソーシャルワーカーを通じてOさんを訪問したときは、体のほうが一応の安定を得たので病院を退院して自宅療養に切り替えたばかりのところでした。

 ただ、家のベッドでじっとしていると体の機能が衰えて、いわゆる寝かせきり老人になってしまい、家族の負担も大変なので、看護婦による訪問看護が週2回、ホームヘルパーによる身近な部分での世話が週2回、移動入浴車による入浴サービスが月2回、そしてわたしが訪問のリハビリに週3回、保険婦による訪問が週に1回程度と結
構毎日誰かが来るようになっていました。

 彼女はお風呂が嫌いだから入りたくないと息巻いていました。
 「垢では死なん。」

ということだそうです。
 しかし訪問看護婦のMさんに自宅の風呂で入る方法を教わると、
「やっぱり気持ちええなも。」
とまんざらでもなさそうです。

 この訪問看護婦のMさんがなかなかの女傑で、入浴用の腰掛けなど寸法を計って自分でこしらえてしまいます。たいしたものとわたしはいつも舌を巻いています。

 Oさんは体こそ不自由ですが、それをはるかに上回る元気な口をお持ちですので、いつもヘルパーのSさんと何やら楽しげにおしゃべりしています。Sさんは体格のいい、明るい元気な女性で、Oさんほどの体重なら片手でブンブン振り回せるだけのパワーもお持ちです。

 OさんはSさんに車椅子でK市内をあちこち連れて行ってもらっています。何年振かで町中を散策するのであまりの変わり様に驚くばかり。
 「どこがどこやらちょっともわっかれせん。」
というのがOさんの感想です。

 Sさんは週に2回来てくれます。それ以外の日は時間があれば、お嫁さんのTさんが散歩に連れて行ってくれます。TさんはSさんと違って小柄ですから、車椅子に移るとき少し大変なようです。
 散歩に行けないときは車椅子に乗って家の前に出ています。そして、通りかかった近所のお友達とよもやま話に時を過ごされるようで、これで結構忙しいとはOさん言です。
 なにしろ女性の立ち話ときたらいったい話すことがどこにあるのかと思うくらい次々と話が展開して行って何の脈絡もなくきりもありません。

 Oさんのご主人は耳が遠いので会話が大変です。先だっても、用事があるのでOさんが大声でご主人を呼んでいたら向かいの人が何事かと家を飛び出して来てくれたそうです。

 そんなこんなで、Oさんの平穏は途切れない訪問者によって破り続けられているわけです。
 彼女は親しみ易い性格が幸いして不自由な体ながら結構毎日家族や周辺の人と上手に交じりながら暮らしておられます。

 こういう人のところへ往療にいくと、わたしの方が癒されているような気がするのです。

 なお、以上の内容は実在の人にヒントを得たものですが、事実そのものではありません。念のため。

《折々の健康》

高血圧常識テスト
以下の問題にはい・いいえでお答えください。解答説明はあと。

1 血圧は年齢に90を加えた値が適当である。
2 血圧が高くても自覚症状がないうちは安全である。
3 血圧が高くても、コレステロール値が高くなければ、それだけ安全といえる。
4 高血圧の人ははげしく体を動かすことを避け、安静にしているほうがよい。
5 入浴は高血圧によくないから、週に1から2回に控えるのがよい。
6 食塩を制限するコツは、なるべく薄味にすることである。
7 はげしく発汗すると体内の塩分が不足する。
8 高血圧の人は香辛料を控える必要がある。
9 降圧剤で血圧が下がっていれば、食塩制限の必要はなくなったといえる。
10 血圧が高いときは、一刻も早く正常領域まで降圧することがたいせつである。
11 降圧剤は内服よりも注射のほうが早く効く。
12 降圧剤は血圧が下がれば、副作用を考えて中止したほうがよい。
13 降圧剤は長く使用すると効きにくくなったり、副作用の心配がある。

答えは全部「いいえ」。

説明
1 これは統計上のいたずらです。高血圧のひとも低血圧の人もいっしょにして計算してみると、最大血圧の平均値がほぼ年齢に90を加えた値に近いというだけのことです。

2 もともと高血圧に特有の自覚症状というものはありません。いままでなんの自覚症状もなかったのに、突如として脳卒中や心筋梗塞を起こしたりするものです。
  自覚症状が出てから治療するのは遅いのです。

3 血清総コレステロール値は180から220mg/dlが理想です。高血圧の場合は血清総コレステロール値が高くなるほど心筋梗塞のおそれがあり、反面血清総コレステロール値が低くなるほど脳卒中が起こりやすいのです。

4 日ごろ体を鍛えていないと、ささいなことで血圧上昇が起こりやすくなり、肥満、高脂血症、糖尿病といった冠状動脈硬化症を危険を生じやすいものです。

5 浴室で脳卒中や心筋梗塞を起こすのは日本だけの話です。これは入浴自体が有害なのではなくて、血圧を上下に揺さぶるような入浴法をするからいけないのです。

6 食物に含まれている食塩量は舌ではわかりません。ほどよい味のみそ汁が冷えると塩辛く感じるし、塩と砂糖がいっしょになると塩味を感じなくなるものなのです。ちなみにちくわ1本には、なんと梅干し1個に含まれる塩分の2倍もの塩分
  が入っています。

7 日ごろ食塩をたくさんとっている人の汗や尿には、塩分がいっぱい含まれていますが、体内の塩分が多くないときは汗や尿の中の塩分はごくわずかです。1日9の汗をかいても1日に5の塩をとっていれば、体内の塩分量は十分に保たれています。

8 香辛料が血圧を上げるという証拠はありません。むしろ減塩で味気無くなった料理に香辛料を上手に使って、おいしく食べるというのが料理上手といえます。

9 降圧剤でふだんの血圧が下がっていても、不慮の血圧上昇は防げません。不慮の血圧上昇による脳卒中や心筋梗塞などの事故を防ぐには、血管壁のナトリウム貯蔵量を減らす目的で食塩は制限すべきです。

10 急激に血圧を下げると腎臓の機能が低下しますし、脳動脈硬化を伴っているときは脳梗塞を起こす危険があります。きわめて徐々に血圧を下げるのがコツです。

11 薬剤が体内に到達する速度は注射のほうが早いにきまっていますが、薬物の降圧効果が始まるには相当時間がかかるので、結局のところ、降圧の目的では内服でも注射でもそれほど差がないのです。

12 一時的に血圧を下げても、体内の昇圧機構が働いている間は、薬をやめれば再び血圧は上がります。治療開始が早期であっても2から3年は薬を続ける必要がありますし、治療開始が遅きに失した場合には一生飲み続ける必要があります。

13 経口利尿薬をベースとした現在の降圧剤治療では、長期にわたって連続使用することで効果が落ちることはありません。また万が一、副作用が出た場合には、別の種類の降圧剤に切り替えることによって、副作用を防ぐことができます。
参考 主婦の友 安心百科
成人病研究所所長 渡辺孝先生

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