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2011年1月25日 (火)

游氣風信 No28「からだと環境1 過敏性腸症候群」

游氣風信 No28「からだと環境1 過敏性腸症候群」

三島治療室便り'92,4,1

 

三島広志

E-mail h-mishima@nifty.com

http://homepage3.nifty.com/yukijuku/

<游々雑感>


 4月12日は世界規模で行われる草の根の大きな行事、アースデイ(地球の日)です。

 アースデイは毎日の自分の小さな行為が必ず地球と係わっていることを改めて認識し直すための記念日なんです。

 1960年代、アメリカは環境問題が深刻化してきました。環境保護のためには法的な整備が必要と、G・ネルソン議員が1970年4月22日をアースデイと宣言して、これをD・ヘイズ氏が世界的な運動として組織化したものです。
 1990年には世界141カ国、2億人以上の参加があったそうですが、名古屋でも1990年が500人、1991年には5000人の参加がありました。

 指圧塾に参加しているシャナン・クレインさんが、名古屋のアースデイのリーダーとして活躍しています。彼女は環境問題、例えば藤前干潟の問題などでよくテレビのニュース等で紹介されていますから、顔は見覚えがあるかもしれません。
 また、彼女以外の外国人生徒達もアースデイに大変関心が深く、アースデイが国際的なイベントであることが伺われます。
 今日はアースデイにちなんで“からだ”と“いのち”と“環境”について簡単なお話しをします。

からだと環境

 まだ地球に“いのち”が生まれてない頃のこと、今からずっとずっとの遥かな大昔。
地球には「空」と「陸」と「海」とがありました。

 「空」は青々とあくまで透き通り、底の無い静けさをたたえていました。
 「陸」は黒々と横たわりその先にはうるうる高い山が連なっています。
 そして「海」は寄せては返すぐんじょう色の波に輝いていました。
 そこにうごめくのは風だけ。空に舞い上がり、陸をびょうびょうと吹き抜け、海鳴りを生んでいます。
 原初の地球は生き物の息吹の無いがらんとした静けさに覆われていたことでしょう。


 ある時、どうしたはずみか、海の中にいのちの仄めき(ほのめき)が漂い始めました。それは細胞膜という袋の中に「空」と「陸」と「海」の素晴らしいエッセンスを封じ込めた“いのち”ある“からだ”です。

 つまり、“からだ”とは「空」の爽やかさと「陸」の暖かさと「海」の優しさを細胞膜や皮膚と呼ばれる袋の中に詰め込んだものです。
 そしてその“からだ”を“いのち”として育むために、「空」からはすがすがしい早朝の林のような透明なエネルギー、「陸」からは取り立てのパセリのような生き生きしたエネルギー、「海」からはきらめく塩の結晶のようなエネルギーを絶え間無く“からだ”に取り入れているのです。

 私たちの“からだ”はこのように外の環境である「空」と「陸」と「海」を内側に閉じ込めた内なる環境として存在し、外なる環境と常に交流しながら“いのち”を育
んでいるのです。

 では、私たちの“からだ”の中の「空」とは一体何でしょう。
 それは鼻から胸一杯空気を吸い込むところ、肺を中心とした呼吸器官です。
 私たちは自分の胸の中に太古の「空」を持っているのです。青く高く澄み切った大空が胸の中に息づいているのです。時には夕日に哀しく染まり、時には真夏の太陽のように深紅の情熱がほとばしります。
 そこには今も一瞬たりとも休まず「空」のエネルギーが満ち溢れています。
 「空」は風となって私たちの“からだ”の中に入り、“いのち”の息吹と換わります。
 次に、私たちの“からだ”の中の「陸」は何処でしょう。
 それは口から食べたり飲んだりして生きる糧を取り入れる腹ですね。腸を中心とした消化器官です。

 土の中には根粒菌などというバクテリアが住んでいて空気の中から窒素を取り出して植物の肥料にしてくれていますが、私たちの“からだ”の中にも有名なビフィズス菌などのバクテリアがいて、消化を助けてくれたりその他さまざまな働きをしてくれています。
 植物は土の中から根っこを通じて栄養を吸収しますが、私たちの腸の表面にも根っことそっくりの形と役割の組織があって栄養をそこから吸収しているのです。まさに土の中と腸の中はそっくりなんです。

 最後に私たちの“からだ”の中の「海」とはなんでしょう。
 丘の上から遥かな水平原を眺め、潮騒を聞いていると何となく懐かしいような哀しいような気分になる人が多いと思います。
 私たちの祖先は海から陸(おか)に上がってきたのです。皮膚のようなしっかりした袋を持たなかった遠い祖先は最初海の中を住まいにしていたのですね。それから長い年月を経て陸を生活の場としたとき、“からだ”の中に「海」を持つ必要があったのです。
 “からだ”の中の「海」は、今でも血潮と呼び称されるところ、血やリンパなどの循環器官です。
 海の成分と血液の成分は性質や比率がそっくりなんだそうです。そして植物の緑の部分、葉緑体も。血液の赤と植物の緑と海の青は本来同じものなんですね。

 おさらいしますと、私たちの“からだ”は「空」と「陸」と「海」という外の環境を取り込んでそれを皮膚という袋の中に詰め込んだ内なる環境のことで、その袋の中は常に外なる環境の「空」や「陸」や「海」のエネルギーを貰うことで“いのち”としているのです。

 それだけでなく“からだ”の中で古くなったり、いらなくなったりしたもの、即ち「うんち」や「おしっこ」などは外の環境に放り出して、あとは知らないよ──と、外の環境つまり地球にゆだねてしまっているのです。実に勝手がいいものですね。

 私たちを取り巻く外の環境つまり地球は黙ってそれを処理してくれます。私たちが取り込んで利用し、「うんち」や「おしっこ」として捨てたカスは地球によって分解されてまた「空」と「陸」と「海」に再生されるのです。しかもタダで。

以下次号


《折々の健康》

過敏性腸症候群
ストレスの春が腸に来る
読売新聞 平成4年4月2日号より

 緊張すると、すぐトイレに行きたくなったり、おなかがゴロゴロ鳴るといって症状を訴える「過敏性腸症候群」は、ストレス社会ならではの神経性の腸の病気と言われる。新入社、人事異動のこの時期には、若いOLや管理職になりたての中高年層からの相談も多い。
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 この病気は、不安やストレスなどの心理的、精神的な要因が、腸の働きに影響を与え、便通異常という身体症状として表れる。ふつうは、下痢症状を訴える人が多く、中には毎食後トイレに行くというひどいケースもある。逆に頑固な便秘に悩む場合や、下痢と便秘が交互に現れることもある。

 東京・八王子市の南多摩病院副院長の村田高明医師によると、季節の変わり目で、自律神経のバランスをこわしやすいこの時期には、「いつも下痢気味」「おなかの調子が悪い」などの症状で病院を訪れる若いOLが多い。最近は四十代の管理職タイプの男性も目立っている。胃や腸などの検査をしてみても、特別異常が見つからない場合、ほとんどが「過敏性腸症候群」という。

 当面の治療には、下痢や便秘を直す薬を投与して、症状の改善に努める一方、イライラなどが激しい場合、精神安定剤などを与えることがある。
 また、最近では、副作用の少ない漢方薬が処方されることも多い。

 村田医師は、こうした当面の治療とともに、さまざまなストレスを解消することの大切さを強調する。現代社会では、家庭にも職場にもストレスの原因が存在する。患者の中には、ストレスの原因となる事柄から逃避するために、医師に病気だと言ってほしくて病院にやってくる人さえいるという。

 じっくりと職場の人間関係や日々の悩みなどを医師に聞いてもらい、カウンセリングを受けることも一つの方法だ。「心療内科などで心理テストや精神療法を受けることを考えてもいいでしょう」と村田医師。

 もう一つ、村田医師は、規則正しい生活を送ることをアドバイスする。
 学生生活の延長で、深夜遅くまでテレビを見ながら間食をする。翌朝、朝食をとらないまま会社に出かけ、駅で栄養剤のドリンクを飲むとかダイエットのため食べないという人も多い。また、不必要に薄着をするのもよくない。
 「偏食せず、きちんと食事をする。要するに、快食、快眠、快便のリズムを守ることが精神的にいい影響を与えます」と村田医師は話している。

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 さて、以上の新聞記事を読んで、もしかしたら自分もそうかもしれないと思い当たる人もおられるでしょう。この手のあいまいな病気に関する情報を見たり、聞いたりすると全部自分に当てはまってしまうもんです。

 この過敏性腸症候群はこのところマスコミがちょくちょく取り上げますから、わりと知られています。といって、最近発生したものではなく、昔から報告されているものです。
 軽い一時的なものは誰でもが経験しているはずです。よほどの強心臓の持ち主でない限り、試験や試合の前になると急におなかが痛くなってトイレに駆け込んだ覚えはあるでしょう。これは急性のもので、原因もはっきりしているから全く心配ないものです。

 問題は長年にわたって反復し、何かことがあると憎悪することです。医学辞典(南山堂)によれば、

過敏性大腸症候群(腸症候群とほぼ同じ)
 自律神経系の失調によって起こる結腸の運動、分泌機能の異常で、腹痛、腹部不快感、腹部膨満、腹鳴、下痢、便秘、交替性便通異常、粘液便、悪心などの腸症状のほか、疲労感、頭痛、動悸、多汗などの血管運動神経症状を伴うものである。

 原因としては緊張、ストレスなどの心因性の影響のほか、下剤の乱用、刺激性の浣腸、喫煙過度があげられる。

ということです。

 私たちは冷暖房によって気温を調整し、電車や自動車によって移動を楽に変え、流通の整備から季節、産地を問わずに好きな食べ物を好きな時に食べることができます。
環境を住みやすい形に作り替えてきたのです。私たちの祖先たちが夢見た理想郷のような生活をしているのです。
 平清盛のように栄華を誇った人でさえ、下宿に住む学生より暑い夏を暮らしたことでしょうし、世界史に君臨するクレオパトラがスーパーの食品売り場を見たら腰を抜かすことでしょう。

 ところが、そんな暮らしを維持するために、現代人は昔の(ほんの数十年前の)人とは全く異なったストレスにさらされるようになってしまったのです。そしてそのストレスに対する抵抗力はまだ身につけるには至っていません。

 この身体は冬は寒さに耐えるものとして、自律神経やホルモンが発達してきましたし、夏も同様に暑さに負けないような身体になっています。ところが今の夏は上着がいるほどガンガンに冷やしてありますから、デパートで働いている女性の中には腰に懐炉を当てている人もいるとか。
 日の出とともに動きだし、日の入りとともに休んでいたリズムもがたがたに崩れました。

ストレスとつきあう

 逃げるのも一つの方法です。しかしどうしても逃げられないストレスもありますし、どこまでも逃げ切れるものではありません。重い病気や怪我からは逃げられませんし、職場からは逃げ出せてもまた次の職場を探さなくてはなりません。

割り切り、諦めるという手もあります。あの上司はああいう人だからもう何をいってもしょうがない、振り回されるだけあほらしい、仕事はお金を稼ぐ手段と割り切ってしまう方法です。

 切り替え能力を身につけるのも、現代人には必要でしょう。仕事が終わったらさっと「5時から男」に変身するのです。もっとも5時に終われる職場は一体何処にあることでしょう。
 趣味を作って、そちらに生きるのは先の切り替え、割り切りにつながります。

 孤立しないことも大切です。愚痴を聞いてくれる人を身近に持つのです。もちろんこの関係を長く続けるには時に応じてこちらも聞き役になることが肝心です。井戸端会議は優れた精神安定所だったことでしょう。今は喫茶店が取って代わっています。
午前中に入ると嫁や姑の悪口が飛び交っています。それはもうすさまじいもので、私などそこにいるだけで悪口が耳に飛び込んできてストレスから過敏性腸症候群になってしまいそうです。

 ストレスからはいかにしても逃げることはできません。完全にストレスを回避したとしたら、今度は退屈というストレスにさいなまれることでしょう。適度なストレスは私たちが生きて行くうえで必要不可欠のものなのです。身体がそう出来上がっているのです。
 今仮に生ぬるく泡の出ないビールを想像してみてください。飲む気が起こらないでしょう。あの喉元をきゅーっと刺激する程度のストレスはなくてはならないものなのです。そこに枝豆があれば・・・これは余談です。

 先の記事には規則正しい生活が必要と書いてあります。しかしそんなことはみんな分かっていることですよね。ストレスを解消することが大切なもの十分承知です。それでもできないからストレスによる病気や問題が起きているのです。

 子供の頃を思い出してください。遠足の当日、昨夜はうれしくてなかなか眠れなかったにもかかわらず実に気持ちよく早起きができませんでしたか。
 これが軽度のストレスに対応するヒントです。毎日を浮き浮き生き生き生きることで、同じストレスでも身体が上手に適応してしまうようです。いのちの奥から行動を駆り立てるもの、元気の元を掘り起こせたらいいのです。

 生きてて良かった!といえる感動が毎日のようにあれば最高です。それを発見する能力は自分が自分に対して行う教育でしか身につかないものです。そしてそれは老後を有意義に過ごすために極めて重要な能力だと思います。

 訓練によってその能力を身につけ得た人と身につけることなく老いた人では歴然たる差があることは、皆さん現実に目の当たりにしていますよね。
 俳句や短歌、盆栽やカラオケ、書や踊りなどに挑戦することで新しい快適なストレスを取り込んでいるお年寄りはいくらでもいます。
 子供のうちは生き生き能力は誰にでもあるのですが、社会という枠組みに取り込まれて生活しているうちに失ってしまいます。その能力を取り戻すには自分で自分を教育するしか方法がないのです。そして、自分で自分に教育することこそ人間と他の動物を分ける文化的指標なんです。

 ストレスも過度になってきますと、本人がストレスに打ちのめされていることに気付けなくなっています。案外元気そうに生活していたのが、一定の限界を超えてポキンと折れてしまうことがあるのです。その場合は周囲の人の思いやりのある“まなざ
し”がそれをひどくなる前に発見して上げなければなりません。普段からそいういう環境を作る努力が必要です。環境を作る努力、これも人間ならではのものですからね。

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