« 游氣風信 No18「俳句という遊び」 | トップページ | 游氣風信 No20「青嶺 宮沢賢治は何故舞ったか1」 »

2011年1月23日 (日)

游氣風信 No19「梅雨 カイロ規制」

游氣風信 No19「梅雨 カイロ規制」

三島治療室便り'91,7,1

 

三島広志

E-mail h-mishima@nifty.com

http://homepage3.nifty.com/yukijuku/

<游々雑感>
梅雨
 じめじめした季節ですが、いかがお過ごしでしょうか。一年中でもっとも人気がない季節と言えばまずこの梅雨でしょう。蒸し暑かったりうすら寒かったりして、体調も狂いがちです。しかも日本と中国の揚子江流域だけの特有な雨季と聞くとなおさらです。

 暦の上では6月11日か12日を入梅と決めてあるそうですが、実際は5月のうちに沖縄のほうから順番に北上し、関東地方でちょうど6月中旬に梅雨になります。終わるのも南の方からです。暦の季節感は昔は京都、今は東京中心に作られたものですから、地方とは食い違って当然です。

 15年前、7月の中頃、名古屋地方が梅雨明け宣言の日、まだまだ凛々しい青年であったわたしはオートバイに跨がって岩手県に行きました。名古屋港からフェリーで仙台まで海路を揺られ、そこからバイクで北上したのです。ところが、東北は梅雨真っ只中。毎日雨の中をずぶ濡れになってツーリングするはめになりました。
 雨合羽を着て、襟元から水が入るのを避けるため首にタオルを巻き付け、長靴を履くという実用的ながらもカッコ悪いスタイルでした。オジサンになった今なら平気ですが、当時はまだ22歳、多少は格好を気にしていたのです。
 小岩井農場で広島から来た女の娘2人と一緒に移った写真があるのですが、その写真も合羽にタオルの襟巻きといういで立ちで、情けないことこの上もありません。

 10日ほどして帰るというその日が、無情にも岩手の梅雨明けの日でした。旅行するときは現地の気象に注意をしなければならないことを身をもって知った貴重な経験です。

 なぜ梅雨というのかと調べますと、この頃青くて艶やかな梅の実が熟すからです。
皆さんの家でも梅酒や梅干しの仕込みで忙しかったことでしょう。
 梅が実る頃の雨だから梅雨ですが、黴が発生しやすいから黴雨(ばいう)ということもあるそうです。確かにこの季節、油断すると所かまわず黴々々。タイルの目地や服などにできると色が落ちなくなって大変です。食べ物も注意しないと黴だらけになってしまいます。
 余談ながら黴よけスプレーなどの毒性はかなり強いので十分注意して使用してください。風呂など決して締め切って掃除しないように。今はやりの密閉式の風呂の場合は換気扇を回しながら使うようにしないと吸い込んで危険です。
 家庭用殺虫剤や化学洗剤の類いを「家庭に農薬を持ち込まない」という運動をしているグループがあります。畑の農薬には過剰に反応しても案外蚊取り線香や虫よけスプレーには無頓着になりがちです。

 話をもどしましょう。古くは梅雨のことを五月雨(さつきあめ・さみだれ)と呼び、江戸時代から梅雨とも呼ぶようになったそうです。ですから有名な芭蕪の俳句

     五月雨の降り残してや光堂

などは5月の雨でなく、梅雨の風景なのです。しかし、どうもピンときませんね。
 梅雨の頃のなんとなく薄暗い感じを五月闇といいますが、5月は一年中で一番さわやかな五月晴れのシーズンですから、どうもこの新暦と旧暦のずれは生理的に受け付けがたいものがあります。俳句の世界でもこの辺はうやむやにごまかして各人のイメージに委ねているようです。

 今月は発行が遅れました。梅雨も間もなく明けることでしょう。その後はジリジリと暑い夏の太陽が心を浮き浮きさせてくれます。


カイロプラクティック療法を規制
平成3年7月9日 読売新聞

背骨のゆがみを矯正し、腰痛などを治療するカイロプラクティック療法について、厚生省は8日までに、「医学的効果が明確ではない」として同療法を行ってはならない「禁忌対象疾患」を定めるとともに、誇大広告を規制することに決め、都道府県に通知した。 今回の禁忌対象疾患としては、ガンやリューマチ、心疾患に加え、ツイ間板ヘルニア、骨粗ショウ症などをあげている。
 治療の手技についても、首に急激な回転を与える「スラスト法」は危険性が高いとして禁止した。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 上記の記事が新聞に書かれていました。
 最近新聞、週刊誌で「短期集中でカイロプラクティック療法マスター独立開業可、定年後の仕事に、サイドビジネスに最適、2泊3日の講習であなたもカイロドクターになれる、高収入が可能・・・」などと言う広告を見かけた方があると思います。
 今回の通達は主としてこれら無認可の治療類似行為を行う施設や個人に対して行われるものでしょう。
 また、有資格者(鍼灸・指圧などの免許をもっている人)に対しても注意を促したものです。

 カイロプラクティックとはアメリカで約100年かかって民間療法の骨格矯正法、整体を皆の共有財産とするべく科学的な仮定・実験・検証を経て体系付け、安全性・有効性を医療のレベルに高めたものです。現在アメリカではこの技術を学ぶために専門の大学へ行き、医師と同等の学習と臨床を経て、ドクターオブカイロプラクティッ
クとならねばなりません。彼らは死亡診断書を書くこともできるようです。

 ひるがえって日本の現状はどうでしょう。アメリカで資格を取って帰ったドクターオブカイロプラクティックは約50名ほどいます。しかし、彼らの資格は日本では全く通用しません。それでカイロプラクティック研究所などという名称で開業しておられます。その理由は鍼師やマッサージ師は政府が公認していますから「鍼灸治療院」とか「マッサージ治療院」と名乗れますが、カイロプラクティックは正規の治療と認められていませんから、「カイロプラクティック治療院」とか「カイロプラクティック医院」と名乗ることは違法になります。それで苦肉の策として「研究所」なのです。

 ここに無資格者の入り込む余地があります。治療院と名乗らず研究所とすれば法に触れないのです。ただしアメリカ帰りのドクターたちの多くは日本という法治国家で臨床をするのですから、鍼や指圧、ほねつぎの資格を日本で取得しています。

 そのほかカイロプラクティックを実施している人達の中には、鍼師、灸師(鍼師と灸師は別の資格です)やあんま・マッサージ・指圧師(長いですがこれで一つの資格です)、柔道整復師(いわゆるほねつぎ、接骨院のこと)あるいは医師や歯科医師がセミナーや弟子入りしてカイロプラクティックを勉強して自分の得意な治療の中に取
り入れたり、カイロプラクティック専門に治療したりしている場合もあります。
(注 鍼灸やほねつぎなどの治療師は3年間専門学校に通った後、国家試験を受け合   格したら免許がもらえ治療師としての身分が保障されます。(来年の受験者から国家試験、それまでは都道府県のおける検定試験)

 指圧の中に「衝圧法」という素早く関節に可動性を与える技術がありますが、これが新聞記事の「スラスト法」に近いものです。以前指圧の法制化のおりにカイロプラクティックなどの技術の一部も指圧の中に含めたのです。すなわち、あんまやマッサージのように揉んだり摩ったりする以外の民間手技療法を一括して指圧としたわけで
す。したがって、従来からの整体も法的には指圧に含まれ、法の下に規制されるようになったのです。

 またほねつぎは柔道整復と呼ぶことから分かるように日本の武道の流れです。よく姿三四郎などで気を失っている人に「エイッ」と気合一閃、活をいれる場面があります。あの「活法」もカイロプラクティックの「スラスト法」と基本的には同類の技術です。スラストとは素早い衝撃のことです。

 それで指圧師や柔道整復師がカイロプラクティックの技術を自分の治療体系の中に慎重に取り入れることは歴史的に自然の成り行きでしょう。それに値するだけの効果が期待できるからです。

 さて問題は先程書いた短期養成あるいは長期養成であっても無資格の人達です。彼らは厚生省あるいは文部省認定の専門学校に3年間も毎日通うなんて時間の無駄だ、その辺の養成講習とやらで簡単に勉強した方が楽でいい、それに正規の学校に行っても医学理論や基礎実技ばかりで、役に立つ実技は全然やらないからだめだと養成講習で聞かされます。
 またカイロプラクティックは法的に国が認めていませんから、全くの野放し状態で、あなたが今からカイロプラクティックの仕事をしたいと思えば今すぐ開業できるのです。
 そこに悪徳業者が入り込み、何も知らない人達から高い月謝を取って、いいかげんな技術を教え、開業させるのです。

 法的な規制がありませんから、宣伝も派手なものです。新聞の折り込みなどで背骨の絵を書いて病名が羅列してある広告が入ってくるでしょう。あれはほとんど無資格のカイロプラクティックや整体です。わたしたち鍼灸師や指圧師だけでなく医師も広告は厳しく規制され、住所や名称、電話番号、診療時間や休日のみ、イラストは地図
のみと決められているのです。昨今は対抗上有資格者でも法的に違反と知っていながら過大な広告をする傾向にはあります。
 厚生省は今回それを規制しようというので、これには大賛成です。

 ところがそうした無資格者の中にも名人上手が多くいて、大勢の苦しむ人を助けていることも事実ですし、現行では法律違反をしているわけでもなく、憲法の職業選択の自由が保障されているから人体に危険が無い限り違法ではないという最高裁の判例もあります。
 それに治るのであれば免許が有ろうが無かろうが関係ない、いざとなれば今流行のおしっこでも飲もう、パンツを脱いで寝るくらいおやすい御用というのが病める人の偽らざる心境でしょうからそのことには触れません。

 ただ、一部の見識の無い(免許が有ろうと無かろうと)同業者によって起こされた、あってはならない医療事故によって、厚生省から首に「スラスト法」をしてはいけないなどというように身体調整の技術の幅を狭められてしまいました。こんなことが続けば苦しむのは同業者であり、病に悩む人であるという事実をよく踏まえて、臨床に当たったり、短期養成の講習をしてもらいたいものだと思います。

 名古屋の大きな私立病院に整体を受けて歩けなくなった女性が入院しているそうです。腰椎ヘルニアなのに無造作な腰の整体をされて車椅子の生活を余儀なくされた人も何人かあります。首をポキッとならされて手のしびれがとれなくなった人の話も聞きます。

 患者側も初回、懇切丁寧な診察と問診、説明が無いような治療院なら途中で帰ってくるぐらいの決意で医療なり治療を受けるべきです。一発で治る病気などそうあるものではありません。そんなのはほっといても遠からず治るものがほとんどでしょう。


 病気は長い時間をかけて築かれた心身の歪みが、今までの人生すべての結果として表れて来るものです。自分の人生史の一つの表現形態なんです。そんなに簡単に考える性質のものではありません。人生史である以上、過去・現在だけでなく未来につながるものだからです。それに、医療過誤で苦しむのは自分自身なのですからね。

 以上、わたし自身十分な自戒を込めての報告です。

|

« 游氣風信 No18「俳句という遊び」 | トップページ | 游氣風信 No20「青嶺 宮沢賢治は何故舞ったか1」 »

游氣風信」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 游氣風信 No19「梅雨 カイロ規制」:

« 游氣風信 No18「俳句という遊び」 | トップページ | 游氣風信 No20「青嶺 宮沢賢治は何故舞ったか1」 »