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2011年1月23日 (日)

游氣風信 No17「魚 痴呆ケア(現在は認知症)」

游氣風信 No17「魚 痴呆ケア」

三島治療室便り'91,5,1

 

三島広志

E-mail h-mishima@nifty.com

http://homepage3.nifty.com/yukijuku/

<游々雑感>

さかな・魚・さかな

 4月22日の読売新聞に「日本の子供が欧米の子供より知能指数が高いのは、魚をたくさん食べているからだ。」という英国脳栄養化学研究所の報告が書いてありました。
魚に多いDHA(ドコサヘキサエン酸)が脳の働きを良くするのだそうです。
 日本のお母さんの母乳には欧米人のそれより2~3倍DHAが多いというのがその根拠です。農水省食品総合研究所でネズミの実験したところ、正しいことが証明されました。
 DHAを多く含む餌を食べたネズミと別の餌を食べたネズミでは、「学習能力」「判断力」「集中力」などの面で違いが出るそうです。
 DHAが多いのはマグロ、イワシ、サンマ、サバなど。効率良く摂るには刺し身が一番、しかし今の子供たちは魚をあまり食べないので心配だと書いてありました。

 知能指数が高いと言うわりには、そういうことをいちいち外国から教わらないと気付かなかったり、「学習能力」の優秀な頭脳の持ち主は「判断力」を働かせた結果海外へ逃げてしまう社会がいつまでも続くようだと淋しいものです。
 またゴミや煙草の吸い殻をどこにでも捨てたり、ただ騒がしいだけで展望を示さない義理人情だけの選挙(実に無意味な喧噪でした)などもあまり頭が良いとは感じさせてくれません。
 周囲の顔色を確認しないと判断できない社会風土に育つ私たちは、顔色をうかがうには確かに優れた「集中力」を発揮するかもしれませんが。

 大体知能指数というのは人間本来の能力というよりはテクニックの問題でしょう。
反復練習でかなり上達するのではないでしょうか。そうでなく生得的な能力だとしてもそれはあくまでも能力であって、能力は教育とそれを活かせる社会があってこそ有効な手段足り得るものとして花開くのです。

 仮にDHAが脳の能力を高めるものであったとしても、それを開花させるのは大人や社会。ヒトとして生まれ人間として生きるためには教育が不可欠です。人間には自分を教育しようという教育欲があるように思えます。その点が本質的にネズミとは異なるはずです。もっともネズミ並の子供を育てて善しとするのなら別ですけどもネ。


 DHAはEPA(エイコサペンタエン酸)などと同じ、必須脂肪酸のひとつです。
必須とは必ず食物から摂らなければならない栄養素です。イワシなどの大衆魚にはどちらも豊富に含まれています。

 翌23日の新聞には「大衆魚が不漁」「イワシなど軒並み高値 黒潮の蛇行か魚種交代か」「今年は食卓から遠~く」「水揚げほぼゼロのマサバ」という見出しが踊っていました。皮肉なものです。


<気楽図書館>

 今月のお薦めは「あなたの『老い』をだれがみる  大熊一夫」(朝日文庫 480円)
。著者は悪徳精神病院を告発、日本の精神医療に大きな衝撃を与えた「ルポ・精神病棟」で知られる朝日新聞の編集委員です。

 精神病にしてもボケ老人にしても、誰もが自分のこととして考えなければならない問題です。にも関わらず敢えて避けているのが現状でしょう。
 わたし自身、現在痴呆の老人や、通り魔的犯罪によって全身の麻痺を余儀なくされた婦人、自営業でなくもしサラリーマンなら労災認定確実と思われる四肢麻痺の男性、その他脳卒中などの重度の障害に苦しむ患者さんやそのご家族と仕事を通して関わっています。しかし、もしこの仕事をしていなければ、全く関係ない世界のことと看過していたに違いありません。

 これら多くの人たちと接することで身体的苦痛、精神的苦痛、経済の問題、生きることそのものの苦労や家族の在り方などいろいろ勉強させてもらっています。また反対にご当人たちの意外な明るさ、強さにこちらが励まされることも珍しいことではありません。この本の著者も同様の感慨を抱いています。

 この本は実に分かりやすく平易な文章で、しかも努めて深刻にならないよう気を配って明るくさまざまな老人問題や実際に頑張っておられる病院をレポートしています。
是非ご一読を。

老年痴呆者へのケア20カ条(一部抜粋)
熊本県国立療養所菊池病院製作

1 ボケの強いお年寄りほど融通性がないので、急激な環境の変化はできるだけ避ける。
2 お年寄りはボケても礼儀正しいので、あいさつなどを通じて、なじみの人、頼りにる人になり切る。
3 安心の場を与える。
4 そのための最もふさわしい手段として、「おなじみの仲間」をつくる。
5 できるだけ孤立させないよう、たとえば骨折などで寝込んだときにも人影少ない部屋に放置してはいけない。
6 お年寄りの不機嫌、執拗な要求には、面倒くさがらずに耳を傾け、受けとめることが肝要。無視、侮辱、矛盾指摘で怒らせたり萎縮させたりしてはいけない。できる限り、お年寄りの気のすむように受け入れてあげる。
7 「老人のたわごと」と片づけずに、その裏の本当の意味を汲み取ってあげる。
8 自分は若いと信じている老人には、老人扱いしない。
9 「説得」より「納得」を心がける。
10 行動パターンを把握して接する。たとえば、物盗られ妄想で落ち着かないときにその人の好きな歌を歌うと落ち着く、など。
11 お年寄りの残された知的能力を見つけ、伸ばすこと。たとえば、夫の名も忘れているようなお婆ちゃんが百人一首はすべて暗記している例もある。
12 欠点をあげつらわず、とにかく生きてゆけるような方法を考える。
13 蔑視、排除、拒否を避ける。
14 叱責で窮地に追い込んではいけない。
15 感情的に対立してはいけない。
16 老人のゆっくりしたペースに合わせる。
17 できるだけ一緒に動いてあげる。
18 話はパターン化して繰り返し教える。骨折してギプスをはめられたお年寄りが、骨折したことを忘れ、「縛られた」と怒った。それに対して看護者が1日に数回ずつ、「目まいがして倒れて手をついて骨を折った」ことを教えたら2週間後には、ほぼ正確に覚えてくれた、という例もある。
19 どんなにシッチャカメッチャカでも動けるうちが花。寝こまれるとボケはさらに進む。「寝こませるな」は鉄則。向精神薬などみだりに使うと寝こみやすいので要注意。
20 適切な刺激を少しずつ与える。昔得意にしていた民謡でも園芸でも掃除でも、なんでもいい。

 考えてみれば、これはボケの強いお年寄りに限らない。この項目のいくつかは、シ
ルバーエイジにさしかかったすべての人々に対する基本的な接し方でもある。

「12 お年寄りと上手に付き合うコツ教えます」より

<追記>
 当時認知症のことを痴呆症とかボケとか言っていました。この文章は1991年に書いたものですから、一部のその記述が残っています。不快な思いをされたら申し訳ありません。

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