游氣風信 No13 「正月 アレクサンダーテクニック」
游氣風信 No13
「正月 アレクサンダーテクニック」
三島治療室便り'91,1,1
三島広志
E-mail h-mishima@nifty.com
http://homepage3.nifty.com/yukijuku/
≪游々雑感≫
新春はいかがお過ごしでしょうか。
わたしはこの通信を昨年中に仕上げ、皆さんのお手元には元旦にお届けできるように頑張るつもりでしたが、忙中閑ありならず、貧中忙ありで年を越してしまいました。
新年のご挨拶が遅くなりましたことを、おわび致します。また、新年早々ご丁寧に年賀状を送ってくださった方にはお礼申し上げます。
今年戴いた年賀状の中には、芸術的なものや思索に富んだもの、楽しい近況報告などいろいろありました。
また、一人暮らしのお年寄りからは、寂しさをそれとなく感じさせる内容の賀状があったり、子供の写真をそのままハガキに仕立てた可愛らしいものも最近目につきます。
次にプライベートに関わらない範囲で幾つか紹介させて戴きます。
Iさん
あけましておめでとうございます
まだまだ多少の夜泣きはありますがとにかく元気一杯です。
(獅子頭と並んだやんちゃ顔が風船にむしゃぶりついた写真に添えて。やんちゃな○ちゃんはしばらく夜泣きで小児はりに来ていました。オット女の子だった。)
Mさん
“健康”という文字に目が行き、“おばさん”を意識しています。
予備の体力を使い出しながら、可愛い○○ちゃんと毎日の衣食住に追われています。
きれいな初夢をどうぞ!
(高校の同級生)
T師
<等身大>の月刊誌いつもありがとうございます。
さらにご進展を
(身体や創造・イマジネーション等に関する恩師)
Tさん(多分)
こちらはお陰様で無事出所卒業できそうです。
(3年間の医療系専門学校夜間部の卒業を間近に。出所とわざと誤記するところに学業の苦労が偲ばれます。しかし、年賀状には住所も名前も書いてなかったので、今春の国家試験が心配です。)
Tさん
皆様お元気で良いお正月を迎えられたことでしょう
昨年はお世話になりました。本年もよろしくお願いいたします。
(一般儀礼的な文ですが、ご本人は通り魔的事件により四肢の麻痺を余儀なくされた一人暮らしの女性。必死の筆跡が感動的です。明るい方。)
Kさん
いつも通信ありがとうございます。昨年は少しはりきりすぎて動き過ぎました。
今年はゆっくりとしたペースにしたいと思っています。
体のこともっともっと知りたいと思っています。
(時々セミナーに呼んで下さる活動的奥さん。)
Mさん
今年も勉強会よろしくお願いします。
本借りっ放しですいません。
(同業者。私はこれ以後、人に本を貸さないことにしました。)
Y君
異常気象、ドイツ統一、イラク問題。世界史の中で自分も生きているんだなあと思う1年でした。
(高校時代、一緒に柔道をやった仲間)
Kさん
ビタミンマッサージ大変良いです。まだ5回位ですけど大変楽になりました。
(神奈川の友人。ムチウチで困っていたので知り合いの東京の治療院を紹介したのです。)
Sさん
お元気でしょうか?
“游氣健康便り”毎号興味深く読ませていただいてます。毎月毎月大変でしょうが楽しみにしていますので頑張って下さい。
また遊びに行きたいと思いますのでよろしくお願い致します。
(以前私のセミナーを受けたうら若き女性。このように励まされると「よっしゃ、頑張ろう」という氣が出てきます。)
I君
現在ぼくは佐賀県庁でがんばっています。
(生まれつきの脳性マヒを克服して、公務員試験に何回も挑戦した青年。確か福祉関係の仕事をしているはず。名古屋の大学に在学中、勉強のやり過ぎで首が痛くなって時々調整に来ていました。)
K君
名大の研究室での仕事と病院のものとで忙しく中々会うことが出来ませんね。励んでいますよ。
(大学の拳法部の同期。いま研究熱心な臨床検査技師。海外まで勉強にいっている様子。)
T先生
紅顔可憐の少年の頃からのテニスのおかげでまだラケットがふれる喜びを満喫しています。
(裏はお元気なテニス姿の写真。明治42年生まれの鍼灸界の大黒柱。)
その他、漢方のS先生や鍼灸のT先生、演出家のYさん、文筆家のMさんなどの年賀状はそれ自体優れた作品であったり、論であったりしていずれ当人の発表が期待できるものもあります。
明けましておめでとうとは、無事1年が過ごせた喜びを分かち合い、さらに今年1年も元気に楽しく暮らせるよう願いを込めて言うものでしょう。
昔は生きること自体大変な時代でしたから、とにもかくにも1年を大過なく暮らし、年越蕎麦を食べ、除夜の鐘を聞き、初詣でに行くという行事は、今よりずっと重みがあったに違いありません。
それに、味噌・醤油・米などの支払いは大晦日でしたから、借りの清算も何とかできたという気持ちも大きいに違いありません。できなければ夜逃げですからね。
今年1年、本当によい年であるように、心して暮らしましょう。やはり善し悪しの決定は自分が付けるものですから。
<正月暦>
去年今年
たちまちにして年が変わるその迅さに対する感慨。
去年今年貫く棒の如きもの 高浜虚子
元日
1月一日。元は物事の始まりを意味する。人の立ち姿の象形。
万物のもとである天を元と言い、政治のもとである天子を元首という。(学研漢和
大字典)
親からもらった命を元気と言うのもここからきている。
元旦の旦は、地平線から日が昇っている象形で、朝のこと。
元日や手を洗ひをる夕ごころ 芥川龍之介
嫁が君
正月三が日に現れたネズミのこと。ネズミは大黒さんや福の神のお使いとして正月にはこれをもてなす。
・・
嫁が君ゐるにまかせて愉しもよ 石川桂郎
人日
正月7日。元日より8日までを鶏・狗・豕・羊・牛・馬・人・穀に当てる。
したがって7日は人日。七草粥を食べる。
人日の雪山ちかき父母の墓 石原舟月
松の内
7日地方によっては15日まで。この間は新年の挨拶が交わされる。
この日が過ぎると注連飾りや門松が取り払われる。松明という。
更けて焼く餅の匂いや松の内 日野草城
左義長(どんど)
14日夜から15日の朝にかけて正月飾りを燃やす。書き初めを燃やすと字がうまくなると言い伝えられている。
・・・
左義長や婆が跨ぎて火の終 石川桂郎
鏡開き
正月11日。餅を切らずにたたき割る。切るは縁起が悪いと嫌われる。
講道館の鏡開きが有名。
相撲取りの金剛力や鏡割 村上鬼城
女正月(小正月)
14日から20日頃まで、地方でことなる。
正月は忙しくて年始に回れなかった女性がこの頃年始に出る。
女正月集いて洩れもなかりけり 山崎ひさを
以上「角川書店刊 入門歳時記」参考
<アレクサンダーテクニック>
肩凝り、腰痛などの原因の一つに姿勢の悪さが考えられます。姿勢は腰の構えや背骨の伸ばし方が重要になるのですが、意識していてもついついグニャッとしてしまいます。
立ち姿美しくすくっと背骨がしなやかに天に向かって伸びていると、見た目がいいだけでなく身体もとても楽になります。
「健康」という字は「健」も「康」も中に「筆」から竹かんむりを取り除いたつくりがあります。「筆」という字は竹でできた筆を真っすぐに立てて字を書く様子の象形です。つまり昔漢字をつくった中国人は、健康とは筆のようにすくっと直立したものをイメージしていたわけです。
「病」は反対に病気で横たわっている病人の象形です。やまいだれはベッドを立てた形、つくりの丙は大の字に横たわる病人を表しています。真っすぐ立つ姿こそ健康の象徴だったのですね。
さて、ではよい姿勢とは軍人のように直立した姿勢でしょうか。たしかに外見はきりりとして整然さを感じさせますが、あれは精神の緊張を維持すると同時に、緊急に対して迅速に対応するための非常な姿勢であって、私たちが日常とるべき自然な姿勢ではありません。
軍隊姿勢は硬直した思考とひたすら規律を守るために考えられたいびつな立ち方です。戦場ではそれが最も重要だからでしょう。
しかし私たちの日常は戦場ではありません。危険な職場はともかく、普通はもっとリラックスして、人と人、人と道具・自然が生き生き交流する場所です。
武道家、特に剣道家は姿勢がよいと言われています。試合のときでも凛と立ち、目にも止まらぬ早さで相手に打ち込む姿は、舞踊とは違った美しさを見せてくれます。
軍隊の直立不動(これがいまだに学校の体育で教えられているのは如何なることでしょう)と、剣道の直立の違いは何でしょう。その差はどこにあるのでしょう。
それをやさしく示してくれるのが、アレクサンダーテクニックです。
1869年、オーストラリアのタスマニアで生まれたフレデリック・マシアス・アレクサンダーは俳優として舞台に立っていたのですが、ある時声が全く出なくなりました。その原因を一生懸命追及していくうちに、自分が何かしようとすると必ずあごを軽く上に突き上げようとすることに気がつき、それが、身体の働きだけでなく精神面にまで強く影響を与えている事実をつかみました。
彼は研究の結果をアレクサンダーテクニックとしてまとめ上げ、86歳で亡くなるまでその普及に生涯を捧げることになります。
現在、このテクニックはきちんとした心理学的方法として技術的にも理論的にも体系付けられ、世界各地で研究普及され、アメリカでは大学の正課として取り入れられている所もあります。
専門家向けの本はかなり難しくなりますが、驚くべきことにこのテクニックの基本は実に簡単なのです。私の持っている本(アレクサンダー式姿勢術 サラ・バーカー著 北山耕平訳 三天書房)の表紙には次のように書いてあります。
これが長生きと健康回復の基本だ!!
「背すじを伸ばしなさい」「あごを引きなさい」─これはまちがい。
「頭を上へ向かって持ち上げる」「肩からできるだけ頭を離す」─さあ、わかりますか。
進退エネルギーを総合的に発揮する革命的な技術!
背すじを伸ばしなさい、あごを引きなさい・・・これこそ軍隊式直立であり、学校式キヲツケです。
この姿勢は実際にとってみると分かりますが、首と背中が緊張でかちかちです。ヨガの先生にもよく見受けられるので習う人は気を付けなければなりません。
ゴルフなどスポーツの初心者もこうなりがちです。ゴルフをやる人はクラブを持って構えてみると首が緊張していることに気がつきませんか?
私もこうしてワープロを打っていて疲れてくると自然に猫背になります。そうなると意識的に背すじを伸ばそうとして背中を緊張させてしまうことがあります。
そんなとき、背を伸ばすのではなく、頭をフワーッと風船が浮いているように上に持ち上げます。するとどうでしょう、背中は無理に伸ばさなくてもゆったり伸び、しかも緊張しません。もちろん腹筋も同様です。
頭がうまく浮かない人は肩から頭を離すようにすると同じように背中がすんなり伸びるはずです。自分で動かすのでなく、釣り人形のように頭のてっぺんに糸をつけて引っ張られるようにします。(実際に髪の毛を引っ張ってもらうとよろしい。)
この時、決して力まないこと。フワーッと動くことです。
こんな簡単な動作が実は直接教えてもちっともできない人が多いのです。残念ながら家庭でも学校でもクラブでも背中を伸ばせ、あごを引けと躾られたからに外なりません。
反対に躾られてない人はぐにゃりと曲がった姿勢になってしまいます。
なにはともあれ、ものは試しと頭をふわりと持ち上げてみてください。気持ち良さを味わいながら試みてくださいね。頑張りは禁物です。
基本的には腰掛けているか、立っているか寝ているかの姿勢がやりやすいでしょう。
それでできるようになったら、歩くとき、立ち上がるときなどあらゆる状況で試してみることです。
日本の礼法に、立つときは「風なき空に一条の煙が立ちのぼるが如し」と言う教えがあるそうです。全くアレクサンダーテクニックと軌を一にする本質を得た教えだと感心します。
(游)
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