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2011年1月22日 (土)

游氣風信 No1

游氣風信 No1「風邪」

三島治療室便り'90,1,20

三島広志

E-mail h-mishima@nifty.com

http://homepage3.nifty.com/yukijuku/

明けましておめでとうございます。
             平成2年元旦

 日々は毎日惰性のように向こうからやって来ます。しかし、元日はどことなくものごとが新しく感じられます。
 この気分を清新というそうです。けれども決して清新な気持ちは外の世界にあるのではなく、私たち一人一人の心の中に湧き起こるものでしょう。元日は気持ちを切り替える為に区切られたとても意味のある日と言えます。
 とりあえず昨年中の嫌な思い出とは決別し、1990年の希望だけ見つめて歩み始めたいと思います。
 以上、いささか遅い年頭の挨拶でした。

 今年も多くの方から心温まる年賀状を戴きました。手のこんだ葉書や目を見張るばかりの達者な葉書もありましたが、圧倒的に多かったのはワープロとプリントゴッコで作成したものでした。家庭の中にも確実にハイテクの波は押し寄せているようです。

 游氣の塾 三島治療室では今月から毎月1回「游氣健康便り」を発行することになりました。
 内容は日常雑感や健康情報、臨床報告等です。家庭で簡単にできる健康法も季節に即してお届けする予定です。
 皆さんからのご意見・ご要望がありましたら極力紙面に活用させて戴きますので、お便り・ご助言をどしどしお寄せ下さい。
 お知り合いの方を紹介して下されば、そちらにも送付致します。ぜひお知らせ下さい。

風邪

 風邪が猛威を奮っています。昔から「○○は風邪をひかない」などといいますが、確かにストレスと風邪の関係は切っても切れないないようです。したがってものごとを余り考えない○○は風邪をひきにくいのでしょう。逆に言えば風邪を引きたくなければ○○になればいいのです。もちろんここでいう○○は知的障害の方をさすのではありません。無邪気にゆったりした心持ちになるというような意味合いです。
 毎年、正月休みになると気が緩んで風邪をひく人が結構います。精神緊張が適度にあるほうが風邪をひきにくいようです。
 漢方では多くの病気は命のバランスを保つために必要なものと考えます。風邪などはその代表的なものです。したがってやたらに薬を飲んで症状を押さえてしまうのは考えものです。
 風邪による発熱はウイルスに打ち勝つための防衛反応です。肝臓や筋肉で体温を発生させ、熱でウイルスをやっつけようとしているのです。ここで座薬や解熱剤で熱を下げてしまうと自然治癒力がうまく働かないため、熱は下がってもウイルスは退治されず、風邪がこじれてしまうのです。
 抗生物質はウイルスには全く効果がないそうです。(但し、細菌の二次感染には有効)
 
 風邪の初期には暖かいものを食べて、蒲団に潜り込んでさっさと寝る・・・これが一番のようです。
 身体のバランスを整えるツボを押したり、摩ったり、お灸をしたりするのは風邪の予防になりますし、罹っても早く治ります。

体を温める食べ物

ネギ・ショウガ湯
 ネギの白根5~10・をみじん切りにしたものと、ヒネショウガ5・をすりおろしたものを湯呑みに入れ、味噌小匙半分とカツオの削り節一つまみを加え、熱湯を注いでフーフー吹きながら熱いうちに飲みます。量は大体で結構です。
 飲んだらすぐ蒲団に入って寝ると汗をかいて早く治ります。

風邪に効くツボ刺激
 
 漢方では風邪は肩甲骨の間にある風門というツボから入り、首と後頭骨との付け根の風池に溜まり、風府に集まるとされています。実際、風邪のひき初めに首スジがぞくぞくすることはみなさんも体験済みことと思います。
 特定のツボを正確に刺激するのは熟練を要しますが、だいたいの見当をつけて皮膚を摩擦しても十分効果が期待出来ます。

肩甲骨の間
 肩甲骨の間を暖かい手か柔らかい布で、少し強めにゴシゴシと皮膚が赤くなるまで擦ります。
 ドライヤーの温風で暖めながら摩擦するとさらに良いでしょう。

首の付け根
 猫をつまみ上げる辺りをグーッと気持ち良い位の強さで指圧します。熱がある時は弱めにします。

首スジ
 耳のしたから首の筋肉に沿って胸までゆっくり撫で下ろします。右手で左首、左手で右首を撫でるとうまくいきます。筋肉の中身を絞り出す感じです。

腕と胸の境目
 席がある時、胸の中心から腋の下に向かって強めに摩ります。これも絞り出しです。
腕と胸の境目は少し強めにグリグリ揉んでおくと良いでしょう。

腰から腎臓の裏
 屋外で仕事をする時は腎臓の裏に懐炉を当てておくと身体が冷えにくいでしょう。
 暖かい手でしっかり摩擦すると身体がほんのり暖まってきます。


 風邪はこじらせると厄介ですから、早め早めの対処が大切です。
 風邪をひくことは既に身体が疲れているわけですから、無理せずに休養を心掛けましょう。
 38.5度以上の熱が2日続いて、身体がどうにも重だるいようなら掛かり付けのお医者さんに診てもらう必要があるかもしれません。風邪がこじれたか、肝炎・腎炎の前触れということもあります。
 風邪は万病の元といいますが、風邪を拗らせると重病になるという意味と同時に、万病の始まりは風邪の症状に似ているという意味もあります。日頃の注意が大切です。
 養生のために常日頃から鍼灸・指圧・整体などの身体調整で身体のバランスを保つようお勧めします。

臨床報告

 <急性の首の痛みと運動障害>
 大型電器店にお勤めのAさん(24歳・男性)が在庫管理中、テレビがずれて頭に当たり、痛くて首が回らないと昨年末に身体調整にみえました。軽いムチウチの状態でした。
 年末のかきいれ時でとても休めない、早く治して欲しいとのこと。

1回目
 首は前後には動きますが左右に振り向くのはとても辛そうでした。肩をすくめて、まるで見えないコルセットをしているようです。
 調整はまず全体のバランスを診ることから始めます。方法は手首の脉と腹の状態を触って調べるのです。正式には腹診といいます。その結果に応じて手足のツボに軽く、しかし慎重に心を込めて鍼をします。
 次に背中を診察します。脊椎を細かく観察した後、背中全体をうかがいます。これを背候診といいます。その後、調整をします。
 Aさんの場合、骨盤の調整をした後、胸椎5・6番の間が少し緊張していましたから緩める操作をしました。頚椎3番の歪みもありましたが、急性期でしたのでごく軽い操作に留めました。
 ついで、首と背中の境目の骨(頚椎7番と胸椎1番)の動きを良くするツボに鍼。
 以上の調整ををしたところ、首の動きがとてもスムースになりました。
 最後に押して痛むところに皮内鍼という、2~3日バンソーコーで固定する小さい鍼と、筋肉の保護のためのキネシオテープを貼って終わりました。

2回目
 3日後、調整にみえました。
 芯に重さがあるものの前回よりかなり楽になった、しかし車でバックする時が辛いとのこと。仕事中うはいたみを忘れたいるようです。
 調整は前と同じ。

3回目
 2日後、ほとんど良くなったけど、車のバックや急に振り返ったりすると痛みが出る
ので、ついつい首を気にしてしまうようです。
 前回と同様の調整に加えて、頚椎3番の矯正。さらに首・肩・胸のリンパ流動法。首がすっかりくるくる回るようになり、完治。


 強い衝撃を受けた場合、2、3日安静にし、お風呂にも入らないことが大切です。筋肉が破損し、炎症を起こしている可能性があるからです。
 深部の筋肉が破損した時、表面の筋肉が硬く緊張して、傷んだ所を守ろうとします。
これを筋性防衛と言います。傷が治れば自然に筋肉はほぐれます。
 しかしただ放置してそれを待っていると、血液やリンパの流れが悪く、老廃物が溜まり、栄養が行き渡りませんから治りが悪く、慢性的なコリになってしまう可能性があります。
 そこで無理なく筋肉を緩める身体調整の必要があるのです。
 Aさんの場合若かった上に、衝撃が重くてもスピードが遅かったことが幸いしました。
 軽くても速い衝撃は奥まで影響が届きますから、ゆめゆめ油断しないように。後遺症
で悩まされると大変ですから。

後記

 病気にならないためには、普段からの養生が必要です。治療はどうしても後手後手になってしまいます。
 日頃から鍼・灸・指圧・整体などの身体調整で身体を整え、適度な運動や腹8部の栄養バランスの取れた食事を心掛けて、快適な毎日を送りましょう。
 
 
三島治療室ではエイズ・肝炎予防のため、鍼は使い捨てにしています。
 灸も痕が残らないよう工夫してあります。
 


(游)

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