メキシコから
昨日、治療中突然の来訪者。
「以前お世話になったFです」
記憶がありません。
ドアを開けたら、以前鍼灸学校に学びながらここへ出入りしていたF君。
誰かが一緒です。
続いて入ってきたのはとても美しい女性。
F君は鍼灸学校を出た後、近くの原病院に就職したはずでした。
ところが今目の前にいる彼はメキシコで鍼灸院を開業し、現地の女性と結婚したといいます。驚きました。実に7年ぶりの来訪です。
「どうしてメキシコに?」
「あれからいろいろありまして、でも、先生のお陰でこうして元気にやっています。彼女と知り合うこともできました」
「ぼくのお陰?なぜ?」
「先生はおっしゃいました。せっかく開業できる正規の資格を手にしたのだから、自分で苦労してみることも価値があるよと。確かに病院に勤務すると安定しています。それでこのままでもいいかなと思っていましたが何か物足らない。そのとき、メキシコのへき地医療のボランティアの話があって出かけたのです。そのまま現地が気に行って住み着き、大変な日々ですが今はメキシコシティーにオフィスを構えることができました。口コミで患者さんもきて頑張っています」
意外な話でした。苦労しなさいと言ったのか言わなかったのかこちらは無責任ですから覚えていません。しかし、そんな何気ない一言を心の奥に秘め、行動し、実現し、こうして感謝の言葉を述べにわざわざやってくる。
何とも感動的なことでした。
文化の違う国、保険制度も確立しておらず、医師にかかることは大変な経済的負担があるそうです。日本で開業していれば難しい患者は医師に丸投げできますが、メキシコでは医師にかからないので奥にどんな病気が潜んでいるか分かりません。それは怖いことだとF君は言います。
戦前、医療制度が確立せず、また西洋医学も抗生剤を持たない時代、鍼灸の先輩方は鍼と艾だけで結核やガンにも立ち向かっていました。
まさにF君の立場はそうです。
困難と遣り甲斐は正比例するものかも知れません。
頑張って欲しいものです。
F君、これを読んでいますか。
言い忘れましたが、最新の鍼灸医学書もいいですが、戦前戦後に書かれた「代田文誌」先生の『鍼灸真髄』などは結核などの難病と対峙した記録に満ちています。古いが故に参考なると思いますよ。
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