長生きの杖
所属している藍生俳句会(黒田杏子主宰)の重鎮・藤平寂信さんが本を出されました。
『長生きの杖・・・俳句とともに・・・』(小学館スクエア)
これは俳句結社誌『藍生』誌上に足掛け7年にわたって連載された70歳以上の投句欄「鶴亀くらぶ」に寄せられた俳句と選者藤平さんのコメントをまとめたものです。
藤平寂信さんは大正11年生まれ。毎日新聞の編集局長、副社長、大阪本社代表を歴任。退職後、瀬戸内寂聴さんの元で得度という変わった経歴の方。今年は齢84歳でピースボートに乗船、世界一周を果たしました。
この本には藍生会員で70歳以上の方の句が紹介され、そこに寂信さんの軽妙なコメントが載っています。例えば寂信さんと同い年の寂聴さんの作品とそれへのコメント。
「銀漢や孤愁の果の金島書 瀬戸内寂聴(京都府 八十二歳)
庵主さまは、いま能の台本を書いていなさるそうだ。物語はこの句のとおり、佐渡に流された世阿弥が孤独の寂しさに耐えながら「金島書」という名の能楽の教本を書き上げる苦節の一編である。(中略)誰だって、もう年だからってあきらめちゃだめよ、とおっしゃる。そうかなあ、と思って聞いている。」
長生きすれば誰もが避けられない「老い」といかに駆け引きしながら生きていくか。味わい深い作品が溢れています。たまたま著名な瀬戸内さんを紹介しましたが、全て巷の普通の方の作品です。ぜひ一読をお勧めします。
けふあるもいのちたふとしからすうり 松浦千種(71歳)
佳きことのありてパラソルくるくると 羽生瑞枝(98歳)
戦中派逝けり枯野の月明り 岡崎さぶろう(74歳)
わが余生あといくばくやとろろ汁 中谷さと(91歳)
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