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2005年10月

2005年10月23日 (日)

万年筆マジック

名古屋駅の東急ハンズでペンクリニックが催されるという情報を得たので行ってきました。

ペインクリニックではありません。万年筆のペンです。

30年前に大枚をはたいて購入したモンブラン製の万年筆マイシュタースティック149という太軸と10年前に購めた同じくモンブランの146という中軸。149のペン先は太字で146は極太字。

149はずっと調子よかったのですが、ここ数年インクの出が悪くなっていました。

ワープロを使い出して20年、万年筆はデスクの引き出しに眠ることが多く、もっぱらパソコンが筆記具の主役である以上、自棄を起こして、インクの出を惜しむのは無理の無いことかもしれません。実際、万年筆は使わないと目詰まりなど起こして具合が悪くなります。

しかしもう一方の146は購入したときから最初の一筆がかけない状態でした。太字はペン先までインクが回りにくいのかと諦めていましたが、葉書の住所書きにも使えないほどの調子の悪さ。

それで、今回ペンクリニックに訪ねてみたのです。

担当のペンドクターはセーラー万年筆の山口さん。万年筆世界では有名な方で、わたしもお名前は存じ上げていました。やや小太りの身体を白衣に包んでわたしのペン149を手に取ると、ペン先に筆圧を加えず紙の上を滑らせます。やおら水で先を洗ったと思ったら何やら手の内ですばやい動作。再びペン先を紙の上で走らせるとインクがすらすら流れます。あっという間に調整終了。

146も同様にして一瞬の早業。

実は技を盗んで今度から自分でも修理をしようと思っていたのですが、余りの迅速さに盗むどころではありませんでした。目にも止まらぬ早業という陳腐な比喩しか思い浮かびません。当てが外れてしまいました。

「毛細管現象が働いてなかったね」とにこり。

「マジックですね」

「マジックではないよ」ときらり。

こうして蘇った二本のペンを携えて帰路についたのでした。

これからは俳句の創作などにはきちんと万年筆を使おうと密かに決意をしながら。

ペンクリニック ペンドクター山口明弘さん

http://www.sailor.co.jp/NEWS/pencli/index.html

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2005年10月21日 (金)

ギックリ腰

ギックリ腰

35歳男性がギックリ腰で治療にいらっしゃいました。その簡単な報告です。

ファンヒーターを出そうとして持ち上げたとき、腰がギクッときて痛み出した。

以前にもギックリ腰の経験がある。しかし、昨年末、急性腰痛の原因が尿路結石だったので、今回も念のために内科に受診。エコー検査で石は見つからず、血尿も無いので急性の筋筋膜性腰痛の診断。鎮痛作用のあるシップを貼布。

翌日、三島治療室に整体と指圧、鍼の治療を希望して来室。過去に数回の来室がありギックリ腰の治療も受けたことがある。

来室時、背中を伸ばすことが出来ず、猫背の状態でとぼとぼ歩いて治療テーブル(ベッドのこと)まで。辛そうである。

テーブルに腰掛けても背中を伸ばすことができない。痛みと硬直のためである。

骨格的所見では腰椎2・3棘突起の間の狭さく。右側の仙腸関節の可動性の低下。

筋肉的所見では大腰筋と梨状筋の筋力低下。

漢方的所見では脾と腎の虚。胆の実。

脾虚は内臓、特に消化器官の疲れ、腎虚は全体のエネルギーレベルの低下、胆の実は筋肉の硬化を示す。

治療はそれらの経絡に対しての処置を中心にした指圧。

特に腎の経絡を深く指圧して気の流れの促進。

脾の経絡の深いしこりの緩解。

背部と殿部に顕著な筋・筋膜の歪みを調整。これらは経絡として診ることも可能である。

上部頚椎に動きの悪さが現れていたので、整体的骨格調整。

背部に筋肉の強い緊張があったのでキネシオテープ。背中の起立筋に貼布。

術後、背中が真っ直ぐに伸びて息が深く入ってくると足取り軽く帰宅された。

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2005年10月15日 (土)

長生きの杖

所属している藍生俳句会(黒田杏子主宰)の重鎮・藤平寂信さんが本を出されました。

『長生きの杖・・・俳句とともに・・・』(小学館スクエア)

これは俳句結社誌『藍生』誌上に足掛け7年にわたって連載された70歳以上の投句欄「鶴亀くらぶ」に寄せられた俳句と選者藤平さんのコメントをまとめたものです。

藤平寂信さんは大正11年生まれ。毎日新聞の編集局長、副社長、大阪本社代表を歴任。退職後、瀬戸内寂聴さんの元で得度という変わった経歴の方。今年は齢84歳でピースボートに乗船、世界一周を果たしました。

この本には藍生会員で70歳以上の方の句が紹介され、そこに寂信さんの軽妙なコメントが載っています。例えば寂信さんと同い年の寂聴さんの作品とそれへのコメント。

銀漢や孤愁の果の金島書   瀬戸内寂聴(京都府 八十二歳)

 庵主さまは、いま能の台本を書いていなさるそうだ。物語はこの句のとおり、佐渡に流された世阿弥が孤独の寂しさに耐えながら「金島書」という名の能楽の教本を書き上げる苦節の一編である。(中略)誰だって、もう年だからってあきらめちゃだめよ、とおっしゃる。そうかなあ、と思って聞いている。」

長生きすれば誰もが避けられない「老い」といかに駆け引きしながら生きていくか。味わい深い作品が溢れています。たまたま著名な瀬戸内さんを紹介しましたが、全て巷の普通の方の作品です。ぜひ一読をお勧めします。

けふあるもいのちたふとしからすうり  松浦千種(71歳)

佳きことのありてパラソルくるくると  羽生瑞枝(98歳)

戦中派逝けり枯野の月明り  岡崎さぶろう(74歳)

わが余生あといくばくやとろろ汁  中谷さと(91歳)

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